メキシレチンによる薬剤性過敏症症候群
2019年8月掲載
薬剤 | メキシレチン循環器官用剤 |
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副作用 | 薬剤性過敏症症候群 |
概要 | 54歳、男性。拡張型心筋症に対して内服治療が行われていた。感冒症状を契機に心室性不整脈の増加がみられたため、メキシレチンの内服を開始した。開始2週間後より全身に皮疹が出現し、同薬中止後も改善がみとめられないため、入院となった。発熱、全身の紅斑、リンパ節腫脹、肝機能障害などの所見も見られたが、採血検査でhuman herpes virus 6を除くヘルペス属ウイルスの再活性化はみとめられなかった。メキシレチンによる薬剤性過敏症症候群と診断され、プレドニゾロンの全身投与が開始された。皮疹は改善したが、第10病日に血圧低下が出現、心筋炎の診断となった。その後もプレドニゾロンを継続したが、第62病日に小腸内出血を併発し、第72病日に死亡した。 |
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薬剤性過敏症症候群(drug induced hypersensitivity syndrome: DIHS)は、特定の薬剤投与後に発症する重症薬疹 の1つであり、発熱などの全身症状を伴う。発症までの投薬期間が2~6 週間と長いこと、肝障害をはじめとする臓器障害が認められること、原因薬剤を中止しても症状が遷延や再燃すること、ヒトヘルペスウイルス 6 型 (HHV-6)をはじめとするヘルペス属ウイルスの再活性化を認めることなどが特徴である。本文献では、拡張型心筋症に伴う心室性不整脈に対してメキシレチンの内服を開始したところ、心筋炎を合併したDIHSを発症、その後小腸内出血を併発し、死亡した1例を報告している。DIHSでは様々な臓器障害を認めるが、心筋炎の併発は稀である。本症例を含めて、心筋炎を併発したDIHSの予後は不良であり、発症メカニズムの解明、治療法の確立などが必要である。
- 著者(発表者)
- 遊佐志乃ほか
- 所属施設名
- 東北大学大学院医学系研究科皮膚科学分野ほか
- 表題(演題)
- 心筋炎を合併したメキシレチンによる薬剤性過敏症症候群
- 雑誌名(学会名)
- 皮膚病診療 41(3) 233-236+263 (2019.3)
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