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ポリスチレンスルホン酸カルシウムによる黄色肉芽腫性虫垂炎

2019年8月掲載

薬剤 ポリスチレンスルホン酸カルシウム循環器官用剤
副作用 黄色肉芽腫性虫垂炎
概要 72歳、男性。糖尿病性腎症と右腎摘後の片腎を原疾患とする慢性腎不全に対して経過観察されており、これに伴う高カリウム血症に対しポリスチレンスルホン酸カルシウム(CPS)を定期内服していた。経過中に黒色便・血便を自覚したため精査したところ、腹部CT検査で虫垂先端に腫瘤性病変を認めた。腹部造影超音波検査では虫垂先端部に嚢状の拡張があり、多房性の構造を呈し、造影にて粘膜の造影効果を示した。PET-CTでは虫垂には有意な集積を認めなかった。以上より虫垂粘液腫と診断し、回盲部切除術を施行した。病理組織学的検査では虫垂壁の全層に及ぶ黄色肉芽腫性炎症を認め、黄色肉芽腫内の好塩基性の無構造物の破片はCPSの結晶と考えられた。

監修者コメント

CPS(アーガメイトゼリー®️)は慢性腎不全患者の高カリウム血症に対して使用される陽イオン交換樹脂内服薬である。本文献では、慢性腎不全に伴う高カリウム血症に対してCPSを内服中、黄色肉芽腫性虫垂炎を発症した極めて稀な1例を報告している。本症例の病理組織学的検査では虫垂内にCPS結晶の沈着を伴う黄色肉芽腫性変化を認めており、CPSの長期内服によりCPSの結晶が虫垂壁に沈着し、慢性的な粘膜障害・炎症が惹起され、黄色肉芽腫性変化をきたしたと考えられた。

著者(発表者)
中村直人ほか
所属施設名
大津赤十字病院外科ほか
表題(演題)
ポリスチレンスルホン酸カルシウム沈着を呈した黄色肉芽腫性虫垂炎の1例
雑誌名(学会名)
日本臨床外科学会雑誌 80(2) 351-355 (2019.2)
第79回 日本臨床外科学会総会 (2017.11)

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