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カナグリフロジンによる正常血糖糖尿病ケトアシドーシス

2019年8月掲載

薬剤 カナグリフロジンその他の代謝性医薬品
副作用 正常血糖糖尿病ケトアシドーシス
概要 71歳、女性。40代で糖尿病、高血圧を指摘され薬物治療が行われていたが、入院4ヵ月前から血糖コントロールが徐々に悪化していた。心筋梗塞の既往もあったため、1ヵ月前からグリメピリド1 mgから0.5 mgに減量し、カナグリフロジン100 mgが追加投与された。また、シックデイ等で食事摂取ができない場合はカナグリフロジンとメトホルミンの内服を中止するよう指導されていたが、入院当日の朝まで継続内服していた。入院2日前より右上腹部痛が出現し、急性胆嚢炎の診断のもと、緊急で腹腔鏡下胆嚢摘出手術が行われた。周術期はグルコース非含有輸液で血糖コントロールも良好なため、インスリン投与も行われなかった。術後の検査で尿ケトン4+(入院時は2+)、血中3-ヒドロキシ酪酸値が5464 µM/L(入院時は1254 µM/L)、総ケトン体は7886 µM/L(入院時は1689 µM/L)と急激な上昇をみとめ、臨床経過とあわせ、カナグリフロジンによる正常血糖糖尿病ケトアシドーシスと診断された。輸液を糖加維持輸液(ソルデム3A®)に変更し、インスリンリスプロとグラルギンの投与も開始した。最終的にカナグリフロジンを除いた経口血糖降下薬を再開し、術後11日目に退院となった。

監修者コメント

カナグリフロジン(カナグル®︎)は、Sodium-glucose cotransporter(SGLT) 2阻害薬であり、尿からの糖排泄を増やすことで血糖値を下げる2型糖尿病の治療薬である。本文献では、本剤の投与約1ヶ月後に急性胆嚢炎を発症し、術後早期に正常血糖糖尿病ケトアシドーシスを発症した1例を報告している。本剤の重篤な副作用の1つに、糖尿病ケトアシドーシスがあり、特に外科手術に伴う糖尿病ケトアシドーシスは海外では報告があるものの、国内ではほとんどない。外科手術はSGLT2阻害薬に関連した正常血糖糖尿病ケトアシドーシスを誘発する様々なリスクを含んでいる可能性があるため、注意が必要である。

著者(発表者)
竹本有里ほか
所属施設名
大阪警察病院糖尿病・内分泌内科
表題(演題)
胆嚢炎術後にSGLT2阻害薬に関連した正常血糖糖尿病ケトアシドーシスをきたした2型糖尿病の1例
雑誌名(学会名)
糖尿病 62(2) 94-100 (2019.2)

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