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ニコチンパッチによるRCVS

2013年11月掲載

薬剤 ニコチンパッチその他の治療を主目的としない医薬品
副作用 Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndrome(RCVS)
概要 50歳、女性。禁煙を目的に近医を受診し、ニコチンパッチ(ニコチネルTTS30)を使用開始した。開始6日後、突然後頭部の激しい痛みが出現した。開始13日後に再び突然の強い後頭部痛が発現し、徐々に軽減したが、鈍痛が残存したため当科を受診。開始15日後に緊急入院となった。ニコチンパッチを中止し、アムロジピン内服を開始した。その後頭痛は徐々に軽減した。入院時の頭部MRAでは両側後大脳動脈に多発する脳血管狭窄を認め、1ヵ月後には正常化していた。これらの経過から雷鳴様頭痛で発症し、ニコチンパッチで誘発された reversible cerebral vasoconstriction syndrome(RCVS)と診断した。

監修者コメント

RCVSは突然の雷鳴様頭痛で発症し、可逆性の脳血管攣縮を特徴とする症候群である。予後は比較的良好であるが、くも膜下出血や脳内出血、脳梗塞などの出血性および虚血性合併症を認めることがある。RCVSの誘因として、妊娠および産褥、エルゴタミンやSSRI、スマトリプタン、タクロリムスなどの薬剤などが報告されているが、誘因が指摘できないこともある。経皮吸収禁煙補助薬であるニコチンパッチによるRCVSは珍しいが、ニコチンパッチ使用中に雷鳴様頭痛をくりかえした際には、本症を念頭においてMRAや3D-CTA などで血管攣縮の評価を行う必要がある。ニコチンパッチはニコチンが持続的にニコチン性アセチルコリン受容体を刺激することが特徴であり、持続的な受容体の刺激がRCVSを誘発するかどうかは今後のさらなる検討が必要である。

著者(発表者)
土方靖浩ほか
所属施設名
名古屋大学医学部大学院医学系研究科神経内科学
表題(演題)
ニコチンパッチが誘因となったreversible cerebral vasoconstriction syndrome(RCVS)の1例
雑誌名(学会名)
臨床神経学 53(9) 721-723 (2013.9)
第134回 日本神経学会東海・北陸地方会

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