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ピシバニールによる顔面神経麻痺

2019年6月掲載

薬剤 ピシバニール腫瘍用薬
副作用 顔面神経麻痺
概要 23歳、男性。左耳介下部腫瘤を主訴に受診した。臨床・画像検査所見より耳下腺リンパ管奇形(リンパ管腫)と診断され、外科的切除では顔面神経損傷のリスクが高いことを説明したうえで、エコーガイド下にピシバニールをトータルで1 KE局注した。局注当日は疼痛もなく腫脹も軽度であったが、翌日より左顔面の著名な腫脹と激しい疼痛が出現した。ピシバニールにより惹起された一時的な炎症による疼痛と考え、鎮痛目的で局注後2日よりオピオイド系鎮痛剤の持続投与を開始した。硬化療法後4日目に、左顔面神経麻痺が出現し、CT所見で軟部組織の腫脹が認められた。血液検査では、CRP 7.93、血中アミラーゼ 1,371と高値で、高度の耳下腺炎が示唆された。炎症の顔面神経への波及を考え、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム(ソル・メドロール®1,000 mg/日×3日間)を開始した。パルス療法終了後も、プレドニゾロン内服を漸減しながら3日間続け、その後は、鎮痛剤の内服にて疼痛コントロールを行い、硬化療法後15日に退院となった。退院後も左側顔面神経麻痺は残存し、疼痛や痛みなどの訴えが消失するまでに5ヵ月も要した。

監修者コメント

耳下腺リンパ管奇形に対してピシバニールによる局所硬化療法を行った後に顔面神経完全麻痺をきたした一例である。ピシバニールは、溶連菌の不活性化生菌の粉末で、細胞性免疫賦活化作用による抗腫瘍薬として開発された。また、炎症反応による癒着を目的とした薬剤としても有効であり、リンパ管奇形にも使用されている。副作用として局所疼痛や発熱などは報告されているが、本症例のような顔面神経麻痺の報告は稀である。原因として、周囲組織への本剤の過度の漏出が考えられるが、合併症を防ぐためには、本剤を病変内に確実に注入し、周囲組織への漏出を極力防止することが重要である。

著者(発表者)
清家卓也ほか
所属施設名
徳島赤十字病院形成外科ほか
表題(演題)
耳下腺リンパ管奇形に対するOK-432局所硬化療法後に顔面神経の完全麻痺を来たした1例
雑誌名(学会名)
形成外科 61(12) 1564-1569 (2018.12)
第13回 日本血管腫血管奇形学会学術集会 (2016.5.21)

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