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クロベタゾールプロピオン酸エステル(デルモベート®)によるクッシング症候群

2019年6月掲載

薬剤 クロベタゾールプロピオン酸エステル外皮用薬
副作用 クッシング症候群
概要 43歳、男性。20年前より尋常性乾癬に対し、very strongクラスのステロイド外用剤で治療されていた。3年前よりクロベタゾールプロピオン酸エステル(デルモベート®)軟膏へ変更され、2年4ヵ月前から5 g/日を塗布していた。2ヵ月前から8 kgの急激な体重増加とともに、高血圧、糖尿病の増悪を認めた。これまでの経過と線状皮膚萎縮、満月様顔貌、中心性肥満といった特異的な臨床症状、内分泌検査にて血中ACTHおよびコルチゾールの日中変動消失も認めたことから、薬剤性クッシング症候群と診断した。クッシング症候群に対し、ヒドロコルチゾン(コートリル®)30 mg/日で補充療法を開始した。また、乾癬に対し、マキサカルシトール(オキサロール®)軟膏と保湿剤での治療を開始し、narrow band UVB(0.3 J/cm2照射)を併用後に、ブロダルマブ(ルミセフ®)を導入した。乾癬の経過は良好で、発症後10ヵ月が経過し、外来加療を継続している。一方、クッシング徴候の軽快傾向はあるものの副腎機能の回復は乏しく、現在もヒドロコルチゾン30 mg/日を補充している。

監修者コメント

クッシング症候群とは、慢性的に副腎皮質ステロイドホルモンであるコルチゾールが過剰となり、満月様顔貌や中心性肥満など特徴的な症状を示す疾患である。一般的に、ステロイド外用剤による薬剤性クッシング症候群の頻度は少ないとされているが、本症例のような乾癬の治療中に発症する症例がこれまでにも報告されている。乾癬では角質層バリア機能が破壊され、経皮吸収が促進されるため、多量のステロイド外用剤が吸収されることや、慢性的に同様の症状が再燃するためステロイドが強いクラスへランクアップされ、外用が長期になりやすいことなどがその理由として考えられる。ステロイドは外用剤であっても重大な全身性副作用をきたすことがあり、細心の注意が必要である。

著者(発表者)
近藤まや ほか
所属施設名
藤田医科大学医学部皮膚科学
表題(演題)
副腎皮質ステロイド外用剤により薬剤性クッシング症候群をきたした乾癬の1例
雑誌名(学会名)
皮膚科の臨床 60(13) 2019-2022 (2018.12)
第281回 日本皮膚科学会東海地方会

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