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ポラプレジンクによる銅欠乏症

2019年5月掲載

薬剤 ポラプレジンク消化器官用薬
副作用 銅欠乏症
概要 61歳、男性。5年前、腎硬化症に伴う慢性腎不全により血液透析とポラプレジンクの投与が開始された。この際、汎血球減少と肝硬変の指摘があり、他院で骨髄異形成症候群の診断を受けている。以後、血液透析とポラプレジンクが継続投与され、汎血球減少も進行していた。今回、両下肢の脱力感とビリビリするような有痛性の異常知覚を自覚、易転倒性もあり受診した。
頸髄後索のT2高信号変化、ビタミンB12及び葉酸が十分補充されている点、亜鉛製剤長期使用からポラプレジンクによる銅欠乏症を疑った。追加検査の結果、血清銅は2 µg/dL未満(基準値68~128)、セルロプラスミンは 2 mg/dL以下(基準値21~37)と異常低値であった。本邦に銅単体の医薬品・サプリメントが存在しないため、米国で市販されている銅サプリメント剤を個人購入し、医師監督下に食品として摂取を開始した。開始2週間で血液障害の回復が認められ、以後他院で経過観察となっているが増悪は認めていない。一方、神経症状は有痛性異常知覚のみ改善が乏しく、不可逆的な脊髄変性を残したまま、経過観察となっている。

監修者コメント

ポラプレジンク(プロマック®️)は亜鉛を含有した胃潰瘍治療薬であるが、本症例は漫然とポラプレジンクを継続投与されたことにより医原性銅欠乏症を発症し、不可逆的な脊髄変性の残存にまで至ってしまった1例である。亜鉛により銅の吸収が阻害され銅欠乏症を発症したと考えられる。本薬剤の添付文書にも重大な副作用として銅欠乏症が記載されている。本薬剤の投与中は医原性銅欠乏症に注意し、異常が認められた場合には適切な処置を行う必要がある。

著者(発表者)
渡邉崇
所属施設名
地域医療機能推進機構(JCHO)仙台病院総合診療科
表題(演題)
不可逆的な脊髄変性を残した銅欠乏症の1例
雑誌名(学会名)
日本内科学会雑誌 107(11) 2310-2315 (2018.11)

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