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タモキシフェンによる急性膵炎

2019年5月掲載

薬剤 タモキシフェン腫瘍用薬
副作用 急性膵炎
概要 47歳、女性。2年前に右乳癌に対して切除術を受け、その後、タモキシフェンを内服していた。タモキシフェン内服開始27ヵ月後に左側腹部痛が出現し、血液検査で膵酵素が上昇し、CTでは膵腫大と左前腎傍腔に脂肪壊死を認めたため、急性膵炎と診断された。絶食と補液、ナファモスタットなどの保存的治療で軽快し、入院13日目に退院した。入院時、血中トリグリセリド値が5512mg/dlと著明に上昇しており、急性膵炎の原因としてタモキシフェン投与による高脂血症が考えられた。入院後よりタモキシフェンを中止したところ、血中トリグリセリド値は速やかに低下し、退院4ヵ月後には基準値内となった。

監修者コメント

タモキシフェンはエストロゲン受容体陽性の乳癌の術後補助療法として使用されている薬剤である。本症例では、乳癌の術後にタモキシフェンの内服を開始したところ、急性膵炎を発症しており、その原因としてタモキシフェン投与による高脂血症が考えられている。本薬剤の添付文書にも、重大な副作用として、血清トリグリセリド上昇による膵炎が記載されている。タモキシフェン投与中の患者は、頻度は少ないものの、膵炎を合併する可能性があるため、トリグリセリド値の定期的な経過観察を行い、上昇を認めた場合には迅速な対応を行うことが必要である。

著者(発表者)
榊原 一郎ほか
所属施設名
香川県立中央病院消化器内科
表題(演題)
タモキシフェン投与中に高トリグリセリド血症を生じ、急性膵炎を発症した1例
雑誌名(学会名)
膵臓 33(5) 847-853 (2018.10)

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