スニチニブリンゴ酸塩による出血
2013年11月掲載
薬剤 | スニチニブリンゴ酸塩腫瘍用薬 |
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副作用 | 出血 |
概要 | 69歳、男性。左腎細胞癌の診断で左腎摘出術を施行後、多発肺転移に対してスニチニブリンゴ酸塩による治療を開始した。その後、9ヵ月後に吐血し、当院消化器内科へ入院となった。食道、胃、十二指腸に明らかな出血源は特定できなかった。数時間後に再度吐血し、一時出血性ショックとなった。2回目の上部消化管内視鏡検査にて右口蓋扁桃よりの出血が疑われ、当科コンサルトとなった。右口蓋扁桃出血の診断で、全身麻酔下で止血術を施行した。全身精査にて他の出血原因は否定され、スニチニブリンゴ酸塩の副作用による咽頭出血と考え、投薬を中止した。その後再出血は認めず、全身状態の改善を待ち、術後21日目に退院となった。 |
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スニチニブリンゴ酸塩(スーテント®)は腫瘍細胞、新生血管の血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、幹細胞因子受容体など複数の受容体に対するマルチターゲット型チロシンキナーゼ阻害剤であり、腎細胞癌の治療としてガイドラインにも組み込まれている。スニチニブリンゴ酸塩の主な副作用として骨髄抑制、出血などがあり、出血の部位としては鼻出血、皮下出血、口腔内出血、消化管出血の割合が多いとされている。出血をきたす機序は不明であるが、血管内皮細胞の維持に寄与するVEGFの阻害作用が関連している可能性が示唆されている。本症例のように、ショックにまで至る咽頭出血の副作用は稀であるが、投与中には注意して経過観察する必要がある。
- 著者(発表者)
- 洲崎勲夫ほか
- 所属施設名
- 昭和大学医学部耳鼻咽喉科学教室
- 表題(演題)
- 腎細胞癌治療中に右口蓋扁桃より出血をきたした1例
- 雑誌名(学会名)
- JOHNS 29(9) 1669-1673 (2013.9)
監修者コメント