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ダサチニブによる炎症反応性大腸ポリポーシス

2019年5月掲載

薬剤 ダサチニブ腫瘍用薬
副作用 炎症反応性大腸ポリポーシス
概要 51歳、男性。慢性骨髄性白血病に対してダサチニブを内服していた。検診で便潜血反応陽性を指摘され、下部消化管内視鏡検査にてびらん、白苔を伴った芋虫状の大腸ポリポーシスを認めた。また血液生化学検査所見では、軽度の貧血とCRPの上昇も認めた。大腸ポリポーシスの家族歴はなく、遺伝性を示唆する身体所見に欠け、大腸以外にポリープを認めなかったことから、炎症を背景に惹起された炎症反応性ポリポーシスと考えられた。ダサチニブに出血性大腸炎の有害事象があることから、慢性炎症の原因として同剤の副反応を疑った。
ダサチニブの投与を中止し、ニロチニブ 800 mg/日へ変更したところ、中止4ヵ月で大腸ポリープは消失し、炎症は著明に改善した。また、中止に伴い、貧血の改善とCRPの低下も得られ、便潜血反応も陰性となった。変更したニロチニブの治療効果も良好で、増悪なく経過している。

監修者コメント

ダサチニブは、BCR-ABLをはじめとした複数のチロシンキナーゼを阻害するマルチキナーゼ阻害薬である。本症例では、慢性骨髄性白血病に対してダサチニブを投与したところ、炎症反応性大腸ポリポーシスを発症した。これまでに本薬剤の有害事象として大腸ポリポーシス形成の報告はなく、貴重な症例と言える。本症例がどのような機序でポリポーシス形成に至ったかは不明であり、今後のさらなる症例の蓄積が重要である。

著者(発表者)
小林真理子ほか
所属施設名
筑波記念病院消化器内科
表題(演題)
ダサチニブが原因で炎症反応性大腸ポリポーシスをきたした1例
雑誌名(学会名)
日本消化器病学会雑誌 115(11) 977-984 (2018.11)

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