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サラゾスルファピリジンによる葉酸欠乏性貧血

2019年4月掲載

薬剤 サラゾスルファピリジン化学療法剤
副作用 葉酸欠乏性貧血
概要 47歳、女性。15年前にベーチェット病と診断され、プレドニゾロン(PSL)40 mg/日とサラゾスルファピリジン(SASP)2.5 g/日で加療されていた。7年前に、慢性進行型神経ベーチェット病の診断でメトトレキサート(MTX)と葉酸製剤5 mg/日が開始された。その後疾患活動は治まり、1年前にMTXと葉酸製剤が中止され、PSLとSASPのみの加療となった。2年ほど前から原疾患の後遺症による精神症状などから食事摂取量が低下し、10 kgほど体重が減少していた。また、2ヵ月前から全身倦怠感が著明となり、入院となった。
入院時の検査所見では、Hb 3.4 g/dLと大球性貧血があり、LDH上昇やハプトグロビンの低下も認め、葉酸も<0.4 ng/mLと低値であった。葉酸欠乏性貧血と診断され、輸血とビタミンB12、葉酸の補充(15 mg/日)で対応した。以後、貧血、倦怠感、食思不振は改善し、SASPを継続したまま葉酸製剤を併用する方針となった。入院14日目に退院となり、その後もSASPと葉酸製剤を継続することで、貧血が出現することなく経過している。

監修者コメント

SASPは炎症性腸疾患や関節リウマチの治療薬として頻用されている薬剤である。本症例は、ベーチェット病に対してSASPによる治療を行なったところ、葉酸欠乏性貧血を発症した一例である。葉酸欠乏性貧血は稀な副作用であるが、添付文書にも重大な副作用の一つとして記載されており、注意が必要である。また、本文献では、SASPを継続しながら葉酸製剤を併用することで貧血を予防できる可能性を示しており、示唆に富む一例と言える。

著者(発表者)
道辻徹ほか
所属施設名
国立病院機構長崎医療センター総合診療科・リウマチ科ほか
表題(演題)
サラゾスルファピリジンにより葉酸欠乏性貧血を来したベーチェット病の一例
雑誌名(学会名)
九州リウマチ 38 (2) 150-155 (2018.9)

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