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アタザナビルによる尿細管間質性腎炎

2013年11月掲載

薬剤 アタザナビル化学療法剤
副作用 尿細管間質性腎炎
概要 66歳、男性。HIV感染症と診断され、アタザナビル(ATV)を含む多剤併用療法を開始した。開始1年後から血清クレアチニン(Cr)の上昇(1.1mg/dL)、潜血尿(沈渣10-19/HPF)、蛋白尿(1+)が出現。6年後には血清Cr 1.5mg/dL、潜血尿(沈渣50-99/HPF)、蛋白尿(2+)、NAG 20.1IU/Lと腎障害の悪化を認め、腎生検が実施された。間質には高度なリンパ球と形質細胞の浸潤が目立ち、尿細管は広範囲に萎縮し、遠位尿細管と集合管周囲には組織球と多核巨細胞から成る肉芽腫形成を認め、電顕像にてアタザナビルと考えられる針状結晶を認めた。

監修者コメント

本症例はHIVプロテアーゼ阻害剤であるアタザナビル(ATV)投与後に腎障害を認め、腎生検の結果、尿細管間質性腎炎と診断された。電顕にて間質にATVと考えられる針状結晶を認めており、ATV結晶析出による尿細管間質性腎炎が原因の慢性腎機能障害と考えられる。機序の詳細は不明であるが、析出ATV結晶に対する免疫組織反応が間質性腎炎の発症に関与したことが推測される。これまでATVが間質性腎炎を惹起する可能性を示唆した報告はあったものの、ATV結晶を腎組織内に確認できた報告はこれまでになく、貴重な症例といえる。

著者(発表者)
多賀麻里絵ほか
所属施設名
東京都立駒込病院腎臓内科ほか
表題(演題)
結晶成分を含む肉芽腫形成が特徴的な尿細管間質性腎炎を呈したHIV症例
雑誌名(学会名)
日本腎臓学会誌 55(6) 1069 (2013.8)
第43回 日本腎臓学会東部学術大会 (2013.10.4-5)

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