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ベタメタゾンの過剰使用とクラリスロマイシンの併用による医原性クッシング症候群

2019年3月掲載

薬剤 ベタメタゾン感覚器官用薬
クラリスロマイシン抗生物質製剤
副作用 医原性クッシング症候群
概要 40歳女性。8ヵ月前、慢性副鼻腔炎と診断され、クラリスロマイシン、0.1% リン酸ベタメタゾンナトリウム(ベタメタゾン)点鼻(1回3滴、1日2回)の処方を開始された。しかし症状の改善に乏しく、1ヵ月前から自己判断で点鼻ベタメタゾンを倍量使用したところ、満月様顔貌、中心性肥満、下肢浮腫、頭重感が出現し、当院紹介となった。血漿ACTHは測定感度以下と低値で、迅速ACTH負荷試験で血清コルチゾールは0.7→8.1μg/dLと反応不良であり、点鼻ベタメタゾンによる医原性クッシング症候群と内因性副腎皮質機能抑制と診断され、点鼻ベタメタゾンを中止し、ヒドロコルチゾン15mg/日による内服補充を開始された。以後クッシング徴候・肥満や諸症状は改善、補充も減量でき4ヵ月後に終了した。6ヵ月後の迅速ACTH負荷試験では6.8→22.3μg/dLと副腎皮質機能の回復が確認された。

監修者コメント

慢性副鼻腔炎に対する点鼻ステロイドの過剰使用とクラリスロマイシンの併用により発症した医原性クッシング症候群の一例である。ステロイド薬の内服や吸入、皮膚外用による医原性クッシング症候群の報告は散見されるが、点鼻薬を原因とする報告は稀である。本症例では点鼻ステロイド薬の過量投与に加え、併用したクラリスロマイシンによるCYP3A4阻害作用のため、血中の合成ステロイド濃度が上昇したことが短期間でクッシング徴候を呈した要因と考えられた。両薬剤は急性副鼻腔炎など耳鼻咽喉科領域で併用されやすい組み合わせであり、薬物相互作用の観点からも十分な注意が必要である。

著者(発表者)
坂本美貴ほか
所属施設名
帝京大学医学部内科学講座
表題(演題)
点鼻ステロイドの過剰使用とクラリスロマイシンの併用により発症した医原性クッシング症候群の1例
雑誌名(学会名)
帝京医学雑誌 41(4) 161-168 (2018.7)

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