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スキサメトニウムによる高カリウム血症、心室頻拍

2019年2月掲載

薬剤 スキサメトニウム末梢神経系用剤
副作用 高カリウム血症、心室頻拍
概要 20歳代、女性。入院1ヵ月前から、統合失調症の被毒妄想による拒食状態となり、入院後も常同姿勢と昏迷状態が続いていた。入院時からdiazepamやlorazepamの経管投与を行ったが効果は乏しく、第10病日から電気けいれん療法(electroconvulsive therapy:ECT)を施行した。
Thiamylal 75~125 mg (2~3 mg/kg)にて全身麻酔を導入し、suxamethonium 20 mg (0.5 mg/kg)にて筋弛緩を得た。1回目では効果が乏しかったため、週に2~3回ECTを施行した。第25病日ECT7回目施行時に、軽度の血圧上昇と頻脈(160/分)を認めたが、esmolol 15 mgの投与で回復した。この時点で、一過性のT波の増高が生じたが、第32病日ECT8回目では、T波の出現に加え、QRS幅の拡大と心室頻拍も生じた。直後の血液検査でK値:6.1 mEq/Lと高カリウム血症を認め、長期臥床やECT時に投与したsuxamethoniumが誘因と考えられた。ただちに心肺蘇生を開始し、電気的除細動(200 J)にて速やかに洞調律に回復した。補液を開始し、4時間後にはK値:3.8 mEq/Lと正常化を確認、心筋逸脱酵素の上昇は認めなかった。精神状態が改善していたため、この時点でECTは終了となった。その後、aripiprazole 12 mgの内服を主とする維持療法に移行し、第95病日に退院となった。

監修者コメント

本症例は統合失調症の昏迷状態に対するECTにおいて、筋弛緩剤として投与したスキサメトニウムによる高カリウム血症から心室頻拍を発症した一例である。高カリウム血症・心室頻拍は致死的な副作用になることもあるため、ECT施行時に本薬剤を使用する際にはT波の増高など心電図変化にも十分に留意する必要がある。

著者(発表者)
岩永亜樹ほか
所属施設名
長崎県精神医療センター精神科ほか
表題(演題)
修正型電気けいれん療法に際しスキサメトニウムによる高カリウム血症・心室頻拍を来した1例
雑誌名(学会名)
精神医学 60(8) 893-898 (2018.8)
第110回 日本精神神経学会学術集会 (2014.6.27)

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