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インフリキシマブ投与後のリンパ球性下垂体炎

2019年2月掲載

薬剤 インフリキシマブ消化器官用薬
副作用 リンパ球性下垂体炎
概要 4歳、女児。2歳5ヵ月時に超早期発症炎症性腸疾患(VEO-IBD)と診断され、メサラジン、完全成分栄養にて治療開始するも症状の悪化を認め、2歳7ヵ月時よりインフリキシマブ(IFX)投与が開始された。4回投与後、症状は改善し、脂肪制限食を開始し、6回投与後に内視鏡にて寛解を確認した。4歳0ヵ月時に低身長の精査がされ、成長ホルモン分泌不全性低身長症(GHD)と診断された。下垂体MRIにて下垂体柄の腫大とT1強調像での後葉の高信号消失を認めた。問診にて3歳0ヵ月頃から多飲・多尿があったことが判明し、水制限試験にて中枢性尿崩症と診断し、デスモプレシン投与を開始した。抗下垂体抗体は陰性で、IgG4や腫瘍マーカーの上昇はなかった。検査所見よりリンパ球性下垂体炎が強く疑われた。デスモプレシン開始後は多飲の消失とともに食事量が増加した。成長ホルモン補充も開始し、身長SDスコアは改善傾向となっている。

監修者コメント

抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤であるIFX(レミケード®️)は、関節リウマチや炎症性腸疾患などの治療薬として広く使用されている生物学的製剤である。リンパ球性下垂体炎は自己免疫学的機序による下垂体の慢性炎症性疾患と考えられており、思春期前小児に発症した報告は非常に少ない。また、IFX投与後に副作用として下垂体炎を発症した症例はこれまでに2例報告されているのみであり、本症例はIFXによる下垂体炎の小児例として非常に稀な報告といえる。

著者(発表者)
西村玲ほか
所属施設名
鳥取大学医学部周産期・小児医学ほか
表題(演題)
超早期発症炎症性腸疾患に対するインフリキシマブ投与後にリンパ球性下垂体炎を合併したと考えられる1例
雑誌名(学会名)
第52回 日本小児内分泌学会学術集会 プログラム・抄録集 255 (2018)
第52回 日本小児内分泌学会学術集会 (2018.10.4-6)

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