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セフメタゾールによる溶血性貧血

2019年1月掲載

薬剤 セフメタゾール抗生物質製剤
副作用 溶血性貧血
概要 56歳、女性。急性胆石性胆嚢炎で緊急入院し、セフメタゾール(4 g/日)、ファモチジン等の点滴が開始され、13日目に腹腔鏡下胆嚢摘出術が施行された。手術2日前から出現した血尿が持続し、貧血、黄疸と腎障害も伴うようになったため、手術翌日に転科した。血液検査結果は、ヘモグロビン値6.8 g/dL、LDH 1,505 IU/L、クレアチニン値1.14 mg/dLで、血清ハプトグロビン値は感度以下であった。直接クームス試験強陽性(抗IgG抗体のみ陽性)であったため、薬剤性溶血性貧血を疑い、投与薬剤をすべて中止し、ソルメドロール125 mg/日静注とプレドニン50 mg/日内服を開始した。治療3日目をピークに溶血は改善し、5日目にステロイドの投与を終了した。血尿発生から21日目に直接クームスの陰転化と貧血の改善を確認し、同日退院となった。
退院後、保存していた患者血清を用いて原因薬剤の検索を行った結果、セフメタゾール結合赤血球に対する抗体が確認され、同薬剤の使用が禁忌であること、また他のセフェム系薬剤の使用も避けるよう説明がなされた。

監修者コメント

薬剤性溶血性貧血は、薬剤による免疫性溶血性貧血の総称で、重症例では腎不全や肝不全を生じ、致死的経過を辿ることがある。本症例は急性胆石性胆嚢炎に対する治療中にセフメタゾールによる薬剤性溶血性貧血を発症し、薬剤の中止とステロイド投与により改善した一例である。100万人に1人の発症率と非常に稀な病態であり、原因特定のため溶血発症時に患者血清を保存しておくことが重要であることを示唆している。

著者(発表者)
塩地夏希ほか
所属施設名
松阪中央総合病院内科ほか
表題(演題)
セフメタゾールが原因と特定できた薬剤性溶血性貧血
雑誌名(学会名)
臨床血液 59(7) 884-888 (2018.7)

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