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レンバチニブによる皮膚・軟部組織欠損

2018年12月掲載

薬剤 レンバチニブ腫瘍用薬
副作用 皮膚・軟部組織欠損
概要 86歳、男性。頸部腫瘤の急速増大を認め、当科を受診し甲状腺乳頭癌未分化転化と診断された。放射線療法(総線量30Gy/10日間)を施行したが増大傾向であったため、レンバチニブ内服を開始した。経過中、レンバチニブによる高血圧、手足症候群、食思不振などの有害事象を認めたが、適宜休薬・減量を行いながら継続した。腫瘍は縮小し局所の完全奏功も得られたが、それに伴い腫瘍直上の皮膚・軟部組織欠損を認めた。
局所出血は生じなかったが、欠損部から右鎖骨が露出するようになり、疼痛も出現したため、レンバチニブは継続したまま大胸筋筋皮弁充填術を行った。術後の合併症はなく、術後6ヵ月間はQOLの改善が得られたが、有害事象による休薬期間中(術後7ヵ月目)に局所再発と多臓器転移(肺、胸膜、肝、膵)の増悪を認め、術後11ヵ月目に死亡した。

監修者コメント

レンバチニブはVEGF受容体をはじめとする複数の受容体チロシンキナーゼを阻害するマルチキナーゼ阻害薬であり、特に進行肝細胞癌に対して高い抗腫瘍効果が報告されている。本症例では、甲状腺未分化癌に対してレンバチニブを投与したところ、皮膚・軟部組織欠損を生じ、大胸筋皮弁充填術が行われた。本薬剤の添付文書においても、甲状腺癌患者において、本薬剤の投与による腫瘍縮小・壊死に伴う頸動脈露出、頸動脈出血、腫瘍出血などの有害事象について注意が喚起されている。特に甲状腺未分化癌では、 頸動脈・静脈への腫瘍浸潤例が多いので、注意が必要である。また、このような有害事象に対して本症例のような筋皮弁充填術は有用であると考えられる。

著者(発表者)
中本翔伍ほか
所属施設名
福山市民病院乳腺甲状腺外科
表題(演題)
レンバチニブで生じた皮膚・軟部組織欠損に対して大胸筋皮弁充填術がQOL維持に有用であった甲状腺未分化癌の1例
雑誌名(学会名)
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 35(2) 145-149 (2018.6)

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