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グルコン酸カルシウムによる冠攣縮

2018年11月掲載

薬剤 グルコン酸カルシウム滋養強壮薬
副作用 冠攣縮
概要 61歳、男性。オルメサルタンとアムロジピンを内服しており、腎機能障害と高カリウム血症(5.7 mmol/L)を合併していた。今回、憩室炎が原因の直腸膀胱瘻に対し、腹腔鏡下直腸切断術が予定された。全身麻酔導入時に、心電図でT波の増高と尖鋭化が観察され、動脈血液ガスはK+ 7.2 mmol/Lと高値であったことから、グルコン酸カルシウム5 mLを緩徐に静注した。直後にSTが上昇し、正常化した後、再度ST上昇を認めた。その後、経胸壁心エコーの壁運動異常、心筋逸脱酵素の上昇がなかったため冠攣縮を疑い、手術を中止し、翌日に冠動脈造影を行った。器質的病変はなく、アセチルコリン負荷試験で右冠動脈の右室枝、房室結節枝にそれぞれ閉塞と狭窄が誘発されたこと、胸痛と下壁誘導のST低下を伴っていたことから、冠攣縮と診断した。ベニジピンとニコランジルの内服に変更し、問題なく2週間後の手術を終了した。

監修者コメント

心電図変化を伴う高カリウム血症では、心筋の活動性を抑制し、不整脈を予防するためにグルコン酸カルシウムが投与される。本文献では、高カリウム血症に対してグルコン酸カルシウムを投与したところ、冠攣縮から心室頻拍に至った一例を報告している。細胞内への急速なカルシウムの流入が冠攣縮の原因と考えられ、高カリウム血症に対して本剤を投与する際には、冠攣縮が発症する可能性にも注意する必要がある。

著者(発表者)
冨永昌周ほか
所属施設名
九州大学病院麻酔科蘇生科ほか
表題(演題)
グルコン酸カルシウム静注が誘因となった冠攣縮
雑誌名(学会名)
第39回 日本循環制御医学会総会 プログラム・抄録集 42 (2018)
第39回 日本循環制御医学会総会 (2018.6.1-2)

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