せりみっく 今月の症例

ホーム > 新着文献  > トスフロキサシントシル酸塩水和物による免疫性溶血性貧血

トスフロキサシントシル酸塩水和物による免疫性溶血性貧血

2013年10月掲載

薬剤 トスフロキサシントシル酸塩水和物化学療法剤
副作用 免疫性溶血性貧血
概要 11歳、男児。発熱、咳嗽を主訴に近医受診し、一度解熱するも呼吸困難、酸素飽和度の低下を認め、当科入院。入院後、抗ウイルス薬等の投与により、聴診上水泡音が残存するも、喘鳴・酸素飽和度が改善したため、入院4日目に退院した。その後も水泡音が残存したため、トスフロキサシントシル酸塩水和物の内服を開始した。呼吸音は改善したが、内服5日目に突然倦怠感・赤色尿が出現したため、トスフロキサシントシル酸塩水和物の内服を中止し、翌日入院した。網状赤血球が増加、ハプトグロビンと補体が低下し、直接クームス試験陽性から免疫性溶血性貧血と診断した。入院時に前日より総ビリルビンやLDHの低下を認めたため、内服中止のまま補液を行った。ヘモグロビンが回復傾向を認め、入院5日目で退院し、順調に貧血も改善した。

監修者コメント

免疫性溶血性貧血は、正球性貧血、網状赤血球増加、LDH・総ビリルビン上昇、ハプトグロビン低下をきたし、直接クームス試験が陽性となる。本症例では、血液系基礎疾患や輸血既往歴がなく、薬剤内服後に発症し、経過中に直接クームス試験が陰性化したことから、薬剤性免疫性溶血性貧血が強く疑われた。この症例においては、今後ニューキノロン系薬剤の使用は避けることが望ましいと考えられる。薬剤性免疫性溶血性貧血は非常に稀であるが、あらゆる薬剤で起こる可能性がある。近年、さまざまな抗菌薬が使用されているが、副作用として免疫性溶血性貧血も念頭に置きながら適正に使用する必要がある。

著者(発表者)
島裕子ほか
所属施設名
公立那賀病院小児科
表題(演題)
薬剤性が疑われた免疫性溶血性貧血
雑誌名(学会名)
小児科臨床 66(8) 1713-1718 (2013.8)

新着文献 一覧

PAGETOP