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テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムによる高アンモニア血症、せん妄

2018年10月掲載

薬剤 テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム腫瘍用薬
副作用 高アンモニア血症、せん妄
概要 71歳、男性。膵頭部がんにてテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(S-1)導入目的に入院した。肝障害はなく、高CRP血症を認めたがCTでは炎症像等は認められず、第8病日にS-1開始となった。第10病日に一過性見当識障害が出現し、第12病日にアリピプラゾールを投与したが改善せず、せん妄が増悪し、アンモニア(NH3)が73μg/dLと軽度上昇認めた。S-1を被疑薬と考え、第12病日を最終投与とした。その後CRPは横ばいだったが、軽度発熱もあり抗生剤も開始したところ、第15病日にせん妄症状は消失した。第18病日にはNH3は41μg/dLと低下し、CRPは逆にやや上昇した。第20病日に生じた急性肺障害にて第21病日に死亡された。

監修者コメント

S-1は、フルオロウラシル(5-FU)のプロドラッグであるテガフールと抗がん作用の効果を高めるギメラシル、副作用を軽減するオテラシルカリウムの3種類の成分が配合された薬剤である。本文献では、S-1による高NH3血症が原因と考えられたせん妄の症例を報告している。5-FUによる高NH3血症は報告されているが、S-1による肝障害が関与しない高NH3血症は報告が乏しく、添付文書にも記載がない。S-1の投与時に意識障害などの症状が認められた場合には、本副作用も考慮し、NH3の測定などを行う必要がある。

著者(発表者)
山川宣ほか
所属施設名
国立病院機構神戸医療センター緩和ケア内科ほか
表題(演題)
S-1による高アンモニア(NH3)血症が原因と考えられたせん妄症例
雑誌名(学会名)
第23回 日本緩和医療学会学術大会 抄録集(Web) P23-3 (2018)
第23回 日本緩和医療学会学術大会 (2018.6.15-17)

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