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アフリベルセプトによる脳塞栓症

2018年9月掲載

薬剤 アフリベルセプト感覚器官用薬
副作用 脳塞栓症
概要 72歳、男性。加齢黄斑変性症に対し、血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor; VEGF)阻害薬であるアフリベルセプ卜が硝子体内に初回投与された約8時間後に、右上肢単麻痺が出現した。頭部MRIでは左放線冠、右上前頭回に塞栓症と考えられる虚血病巣を認めた。脳塞栓症の診断でヘパリンナトリウム持続静注およびアスピリンを開始した。第4病日より右上肢筋力の改善を認め、第9病日に退院とし、退院後もアスピリンを継続した。VEGF阻害薬投与は中断したままで、発症から4ヵ月後の現在まで視力を含む神経症候や眼底所見に明らかな増悪なく経過している。

監修者コメント

血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬は大腸癌などの悪性腫瘍や加齢黄斑変性症の治療薬として用いられている。本症例では、加齢黄斑変性症に対してVEGF阻害薬であるアフリベルセプトの硝子体内注射を行ったところ、8時間後に脳塞栓症を発症した。硝子体内に投与されたVEGF阻害薬が血中に移行し、短時間で血液凝固能が亢進した結果、脳塞栓症を来した可能性が推測されている。これまでにもVFGF阻害薬による治療中に脳梗塞を含む血栓症が発症することが報告されており、本薬剤の投与中は十分な経過観察を行う必要がある。

著者(発表者)
水谷浩徳ほか
所属施設名
済生会熊本病院神経内科ほか
表題(演題)
アフリベルセプト硝子体内初回注射直後に発症した脳塞栓症の1例
雑誌名(学会名)
臨床神経学 58(5) 314-319 (2018.5)
第220回 日本神経学会九州地方会

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