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トラスツズマブエムタンシンによる角膜上皮障害

2018年8月掲載

薬剤 トラスツズマブエムタンシン腫瘍用薬
副作用 角膜上皮障害
概要 40代、女性。数年前より乳房全体が腫瘤となった進行乳癌で、疼痛も著明となり受診した。受診時、乳頭部潰瘍を形成し腋窩リンパ節転移も著明であったことから、オキシコドンによる疼痛コントロールを行いながら、化学療法FEC100 6クール→トラスツズマブ+nab-PTX→ペルスツズマブ+トラスツズマブ+エリブリンと化学療法を継続し、肝転移出現後からトラスツズマブエムタンシン(T-DM1)による治療を開始した。
T-DM1 5クール目頃より、視力障害を訴えるようになった。精査にて、両眼の角膜に異型上皮の侵入が指摘され、T-DM1を休薬した。その後、徐々に視力障害は軽快しきてたが、再び局所腫瘤が増大し、肝転移も増大傾向を示したため、ヒアルロン酸ナトリウム点眼薬を投与し症状に注意しながらT-DM1を再開した。再開後、視力障害は生じていない。

監修者コメント

トラスツズマブエムタンシン(T-DM1、カドサイラ®)は、抗HER2抗体であるトラスツズマブに微小管重合体阻害薬誘導体であるDM1(エムタンシン)を結合させた抗体薬物複合体であり、HER2陽性の乳癌に対する治療薬として使用されている。本文献では、高度進行乳癌に対するT-DM1の投与中に角膜上皮障害をきたした症例を報告している。HER2は乳癌細胞のみならず、角膜上皮細胞にも発現しており、同薬剤による角膜上皮障害の可能性が考えられた一例である。

著者(発表者)
角賢一ほか
所属施設名
同愛会博愛病院外科
表題(演題)
トラスツズマブエムタンシン(T-DM1)加療中、角膜上皮障害がみられた高度進行乳癌の一例
雑誌名(学会名)
第26回 日本乳癌学会学術総会 プログラム・抄録集 707 (2018)
第26回 日本乳癌学会学術総会 (2018.5.16-19)

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