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エソメプラゾールによる横紋筋融解症

2018年8月掲載

薬剤 エソメプラゾール消化器官用薬
副作用 横紋筋融解症
概要 67歳、男性。逆流性食道炎に対しボノプラザンフマル酸塩を投与された。開始した約4週間後から特に誘因なく強い背部筋肉痛を自覚するようになったため、薬剤との関連を疑い自己判断で内服を中止しており、中止後に背部筋肉痛は消失していた。ボノプラザンに代わり、エソメプラゾール(EPZ)が開始され、その後は筋肉痛の訴えはなく、血液検査での筋原性酵素の上昇も認めず経過していたが、10ヵ月後に全身倦怠感、体幹・四肢の筋肉痛のために入院した。横紋筋融解症と診断され、ボノプラザン投与時のエピソードも考慮し、EPZの関与を疑った。EPZの投与中止と十分な補液により腎障害を合併することなく改善した。

監修者コメント

プロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor: PPI)であるエソメプラゾール(ネキシウム®)は強力な酸分泌抑制効果を有し、消化性潰瘍や胃食道逆流症、ヘリコバクターピロリ菌の除菌治療などに広く使用されている。本症例では、逆流性食道炎に対してエソメプラゾールの内服を開始したところ、約10ヶ月後に全身倦怠感、筋肉痛を認め、筋原性酵素上昇や尿所見などから横紋筋融解症と診断されている。同薬剤の添付文書にも重大な副作用として横紋筋融解症が記載されている。PPIを投与する症例は今後ますます増加することが予想される。頻度は少ないものの、PPIの投与により横紋筋融解症を疑う所見を認めた際には、速やかな診断と適切な対応を行うことが重要である。

著者(発表者)
西川潤ほか
所属施設名
富山県済生会富山病院内科ほか
表題(演題)
エソメプラゾール長期投与後に発症した横紋筋融解症の1例
雑誌名(学会名)
日本消化器病学会雑誌 115(3) 299-304 (2018.3)

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