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アダリムマブによる肺障害

2018年8月掲載

薬剤 アダリムマブその他の代謝性医薬品
副作用 肺障害
概要 63歳、女性。既往歴に関節リウマチ(RA)とシェーグレン症候群がある。関節リウマチに対し9年前からメトトレキサート(MTX)6 mg/週を開始し、3年前からアダリムマブ(ADA)40 mg隔週皮下注を併用することで病勢は安定していた。今回、乾性咳嗽が出現し、胸部単純CTで右下葉を中心にすりガラス様陰影を認めたため、当科受診となった。
血液検査で、C反応性蛋白0.5 mg/dLと軽度上昇を認めた以外、白血球数とプロカルシトニンは正常域であった。また、KL-6は1,327 U/mL、SP-Dは253 ng/mLと上昇を認め、初診時の胸部CTでは末梢気管支の牽引性拡張も認めた。MTXによる薬剤性肺障害を疑い、MTXを中止しADAを継続して経過観察したが、中止2ヵ月後の胸部単純CTですりガラス陰影の拡大があり、RA関連間質性肺炎の増悪、シェーグレン症候群に続発するリンパ増殖性肺疾患の合併、ADAによる薬剤性肺障害などを考え、ADA投与を中止したところ、症状は軽快し、陰影や肺機能も改善した。KL-6とSP-Dも低下したことから、ADAによる薬剤性肺障害と診断した。その後、RAの病勢増悪に対しアバタセプトやトシリズマブを開始し、RAの症状は安定している。また、肺病変の再増悪も認められていない。

監修者コメント

ヒト型抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体製剤であるアダリムマブ(ヒュミラ®)は関節リウマチや炎症性腸疾患の治療薬として広く使用されている。本文献では、関節リウマチに対して同薬剤を使用し、開始から3年後に薬剤性肺障害を発症した症例を報告している。生物学的製剤の使用中に肺障害をきたした際には、感染などを除外すると同時に、薬剤性肺障害も考慮すべきであり、本症例のように長期使用中であっても発症する可能性があることに注意すべきである。

著者(発表者)
小谷内敬史ほか
所属施設名
聖隷三方原病院呼吸器センター内科ほか
表題(演題)
投与開始から3年後に発症したアダリムマブによる薬剤性肺障害の1例
雑誌名(学会名)
日本呼吸器学会誌 7(2) 114-118 (2018.3)
第112回 日本呼吸器学会東海地方学会 (2017.11)

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