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フルオロウラシルによる高アンモニア血症

2013年9月掲載

薬剤 フルオロウラシル腫瘍用薬
副作用 高アンモニア血症
概要 72歳、男性。上行結腸癌、S状結腸癌同時多発転移、左肺転移、腹膜播種転移に対して、mFOLFOX6療法を開始した。開始24時間後に嘔気、30時間後に激しい嘔吐を認めた。44時間後に軽度ふらつきと言動の不一致があり、投与終了1時間後に意識が消失した。意識レベルはJCSIII‐300で、バイタルサインは異常なし。他に明らかな神経学的所見は認めなかった。検査所見ではBUN28.4mg/dL、血中クレアチニン値1.21mg/dL、血中アンモニア値399㎍/dLと軽度の腎機能障害と高アンモニア血症を認めた。意識障害の原因検索で行った頭部MRI検査等では異常所見を認めず、意識障害の原因を化学療法に伴う高アンモニア血症によるものと診断した。意識消失4時間後より肝不全用アミノ酸輸液、肝不全治療薬による治療を開始した。第2病日には、JCSI‐2まで回復し、アンモニア値も41㎍/dLまで低下した。第3病日には意識障害は改善し(JCSI‐0)、第4病日には歩行開始し、第12病日に退院となった。

監修者コメント

FOLFOX療法やFOLFIRI療法などの大腸がんに対する化学療法のレジメンにフルオロウラシル(5FU)の持続静注療法が含まれており、症例数の増加に伴い、高濃度5FU使用時の有害事象として高アンモニア血症の報告が増加している。本症例ではmFOLFOX6療法を開始したところ、血中アンモニア値が399㎍/dLまで上昇し意識障害を生じたが、レジメンを5FU投与量のより少ないFOLFOX4に変更することで治療継続が可能となった。高用量5FU投与中は腎機能障害、脱水、便秘、感染症、体重減少などの発症に注意し、意識障害が認められた場合は高アンモニア血症の可能性も考慮して治療を行う必要がある。

著者(発表者)
清水哲也ほか
所属施設名
国立病院機構横浜医療センター外科
表題(演題)
mFOLFOX6療法後に5FUに起因する高アンモニア血症をきたした1例
雑誌名(学会名)
日本臨床外科学会雑誌 74(5) 1162-1167 (2013.5)

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