メサラジンによる好酸球性肺炎
2018年5月掲載
薬剤 | メサラジン消化器官用薬 |
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副作用 | 好酸球性肺炎 |
概要 | 53歳、男性。潰瘍性大腸炎と診断され、メサラジン3,600 mg/日の内服を開始した。開始後11日目より38度の発熱、咳嗽が出現し、細菌性肺炎の疑いで抗生物質を処方されたが改善せず、当院を受診した。 末梢血での好酸球の増加及び胸部CTでの末梢優位の浸潤影を認めたことから、好酸球性肺炎を疑った。入院5日目の気管支鏡検査にて、右B3のBALFでは、好酸球95%、マクロファージ2%、リンパ球3%と好酸球分画の上昇を認めた。同時に施行したBALFの一般細菌培養、抗細菌培養は陰性で、経気管支肺生検(trans-bronchial lung biopsy:TBLB)では、PAS(periodic acid Schiff)染色にて肺胞壁、肺胞に好酸球の浸潤を認めたが、同標本のEVG(Elastica van Gieson)染色では間質性肺炎を示唆する線維化は認めなかった。メサラジン内服開始後に呼吸器症状が出現していること、またBALFとTBLBの所見より、メサラジンによる薬剤性好酸球性肺炎を疑った。 入院後5日目より、メサラジンの内服中止とプレドニゾロン0.5 mg/kg/日の内服を開始し、呼吸器症状は速やかに改善を認め、解熱傾向となった。プレドニゾロン同量の内服に切り替え、入院後14日目に退院し、外来での経過観察に移行した。外来通院中に潰瘍性大腸炎の再燃を来したが、プレドニゾロンにアザチオプリンを併用することで症状は寛解し、良好な経過を認めている。 |
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メサラジン(アサコール®)は潰瘍性大腸炎の治療薬として広く使用されている。近年、頻度は少ないものの、本薬剤が原因と考えられる好酸球性肺炎が報告されている。好酸球性肺炎は、肺実質もしくは周囲組織への好酸球の浸潤により惹起される肺障害である。過去の報告に比べ、本症例は比較的少量かつ短期間のメサラジンの投与で好酸球性肺炎を発症している。潰瘍性大腸炎に対して本薬剤を投与した後に呼吸器症状などが出現した場合には、薬剤性肺障害の可能性も念頭に置く必要がある。
- 著者(発表者)
- 小針尭司ほか
- 所属施設名
- 深谷赤十字病院内科
- 表題(演題)
- Mesalazineにより薬剤性好酸球性肺炎を来たしたと考えられる1例
- 雑誌名(学会名)
- 日本内科学会雑誌 107(1) 81-87 (2018.1)
監修者コメント