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グリチルリチン製剤による偽性アルドステロン症、心房細動

2018年5月掲載

薬剤 グリチルリチン・グリシン・システイン配合剤その他の代謝性医薬品アレルギー用薬
副作用 偽性アルドステロン症、心房細動
概要 78歳、女性。C型肝硬変、肝細胞癌の既往があり、5年前よりグリチルリチン・グリシン・システイン(グリチルリチン80mg含有)配合剤40mL/日を週4回静注されていた。路上で倒れているところを発見され救急要請となり、救急隊到着時に心室細動を認めた。来院時、血清カリウム(K)値低値とQTc延長を認め、低K血症により心室細動をきたしたものと考えられた。入院後、低K血症にもかかわらず尿中K排泄量は多く、第6病日のレニン活性・アルドステロン値はともに低いことより、偽性アルドステロン症と診断した。グリチルリチン製剤の中止とK補充により血清K値は正常化し、経過中に致死性不整脈の併発はなかったが、低酸素脳症で死亡した。

監修者コメント

グリチルリチン製剤(強力ネオミノファーゲンシー®)は慢性肝疾患における肝機能異常の改善を目的に使用されている。本文献では、グリチルリチン製剤の静注により、偽性アルドステロン症をきたし、心肺停止に至った稀な症例を紹介している。偽性アルドステロン症とは、主に医薬品などの服用により、アルドステロンが過剰に分泌されていないにもかかわらず、原発性アルドステロン症様の高血圧や低K血症に伴う四肢脱力、筋力低下などを示す疾患である。特に本症例の様な高齢者に本剤を使用する場合は、定期的に血清K値を測定し、低K血症やQT延長を惹起する薬剤の併用の有無などを確認すべきである。

著者(発表者)
的井愛紗ほか
所属施設名
兵庫医科大学集中治療医学科ほか
表題(演題)
静注グリチルリチン製剤による低カリウム血症から心室細動をきたした偽性アルドステロン症の1例
雑誌名(学会名)
日本臨床救急医学会雑誌 20(6) 748-752 (2017.12)

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