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ルキソリチニブによるB型肝炎ウイルス再活性化

2018年4月掲載

薬剤 ルキソリチニブ腫瘍用薬
副作用 B型肝炎ウイルス再活性化
概要 81歳、女性。真性多血症に対してヒドロキシカルバミドによる化学療法を行っていたが、治療抵抗性のため、分子標的薬ルキソリチニブを導入し経過は良好であった。初診時にHBs抗原(-)・HBs抗体(+)・HBc抗体(+)であったことから、B型肝炎ウイルス再活性化予防のため専門医の受診を勧められ、当科を受診した。当初HBV-DNA TaqMan PCRは感度以下陽性で、肝酵素はALT 40U/Lと軽度上昇を認めるのみであったが、徐々にHBV-DNAが上昇し(3.3 LogIU/L)、B型肝炎ウイルス再活性化と診断され、エンテカビル(ETV)0.5mg/日による抗ウイルス治療の開始となった。ETV開始1ヵ月後にはHBV-DNAは未検出となり、AST 35U/L・ALT 27 U/Lと肝酵素も低下傾向を示した。その間、ルキソリチニブは減量することなく継続し、真性多血症の増悪もなく良好な経過であった。

監修者コメント

ヤヌスキナーゼ(JAK)を選択的に阻害する分子標的薬であるルキソリチニブ(ジャカビ®)は、骨髄線維症および真性多血症の治療薬として使用されている。本薬剤は、免疫機能に重要な役割を担う多くのサイトカインや増殖因子のシグナル伝達を阻害するため、添付文書や適正使用ガイドにもB型肝炎ウイルスの再活性化に対する注意喚起が記載されている。本薬剤の投与前には肝炎ウイルス感染の有無を確認し、キャリアや既往感染者に対しては投与中も慎重な経過観察および適切な処置を行う必要がある。

著者(発表者)
上平祐輔ほか
所属施設名
広島赤十字・原爆病院
表題(演題)
真性多血症に対してルキソリチニブ投与中にHBV再活性化を認めた1例
雑誌名(学会名)
肝臓 58(S-3) A951 (2017.11)
第42回 日本肝臓学会西部会 (2017.11.30-12.1)

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