トリクロルメチアジドによるThiazide-Induced Hyponatremia
2013年9月掲載
薬剤 | トリクロルメチアジド循環器官用剤 |
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副作用 | Thiazide-Induced Hyponatremia |
概要 | 86歳、女性。近医にて高血圧症に対して、トリクロルメチアジド、スピロノラクトンが処方された。数日後より嘔気、全身倦怠感が出現し、経口摂取は不良となった。投与開始3週間後に3度の失神が見られ、当院に緊急搬送された。意識状態は改善したが、著明な電解質異常を認めたため当科に緊急入院した。検査所見は血清Na105mEq/L、K2.3mEq/Lと著明に低下し、ADH9.8pg/mLと高値であった。利尿薬使用に伴う腎からのNa、K喪失や経口摂取不良による影響が最も考えられた。トリクロルメチアジド、スピロノラクトンを中止し、輸液を行うことにより血清Na、K値は順調に改善し、第15病日に退院した。 |
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サイアザイドにより誘発される低Na血症をThiazide-Induced Hyponatremiaという。 Thiazide-Induced Hyponatremiaでは、細胞外液量は正常であることが多く、ADHは通常抑制されている。しかし、経口摂取不良や高用量の利尿薬使用などの条件下では、hypovolemicとなり、ADH高値の低Na血症をきたす。本症例では、年齢や体格を考慮すると、比較的高用量の利尿薬が使用されていたこと、更に数週間、経口摂取が不良であったことで、細胞外液が低下したと考えられた。またK保持性利尿薬が併用されていたために高度の低Na血症に至ったと考えられる。サイアザイド内服中の患者の10人中3人が Thiazide-Induced Hyponatremiaに至ったとの報告もある。Thiazide-Induced Hyponatremiaのリスクファクターとして高齢、やせ型、女性などが挙げられており、このような患者でのサイアザイド内服には注意を要する。
- 著者(発表者)
- 芝真希ほか
- 所属施設名
- 松山赤十字病院内科(糖尿病・代謝内分泌)
- 表題(演題)
- ADH高値のThiazide-Induced Hyponatremiaの1例
- 雑誌名(学会名)
- 日本内分泌学会雑誌 89(S) 27-29 (2013.6)
第22回 臨床内分泌代謝Update (2013.1.18-19)
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