シロスタゾールによるQT延長症候群
2018年1月掲載
薬剤 | シロスタゾール血液・体液用薬 |
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副作用 | QT延長症候群 |
概要 | 86歳、男性。右外反母趾を契機とした潰瘍で形成外科を受診した際、重症下肢虚血を指摘され血行再建目的に当科へ紹介となった。入院第2病日からシロスタゾール200 mg/日を開始し、第5病日に右浅大腿動脈狭窄に対して血管内治療(EVT)を行った。術後の経過が良好だったため、引き続き膝下動脈に対するEVTを検討していたが、第9病日に2度安静時に失神した。採血では血清K値の著しい低下は認めなかったが、心電図で新規のU波の出現とQTcの著名な延長を認めた。その後モニター心電図で多形性心室頻拍を確認したため、同日緊急で体外式ペーシングを挿入しICUで管理となった。 QT延長の原因として明らかな電解質異常はなく、徐脈によるQT延長に加え、新規に追加したシロスタゾールによる薬剤性QT延長症候群が考えられた。休薬によりU波は消失しQTも短縮した。ただし、徐脈によるQT延長と心不全を認め体外式ペーシングを抜去することはできず、第40病日に恒久的ペースメーカーの植込み術が施行された。 |
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QT延長症候群は、心電図にQT延長を認め、トルサデポアンと呼ばれる特殊な心室頻拍あるいは心室細動などの重症心室性不整脈が生じて、めまいや失神などの脳虚血症状や突然死をきたす症候群である。QT延長症候群の原因薬剤としては、抗不整脈薬や向精神薬などが報告されているが、本症例のような抗血小板剤であるシロスタゾール(プレタール®)によるQT延長症候群は稀である。同薬剤は慢性動脈閉塞症や脳梗塞の再発予防などに広く使用されているが、QT延長症候群による重症心室性不整脈を生じる可能性があることに注意する必要がある。
- 著者(発表者)
- 辻俊比古ほか
- 所属施設名
- 福井大学医学部附属病院 循環器内科
- 表題(演題)
- シロスタゾールによる薬剤性QT延長症候群の一例
- 雑誌名(学会名)
- 第65回 日本心臓病学会学術集会 抄録集(Web) P-421 (2017)
第65回 日本心臓病学会学術集会 (2017.9.29-10.1)
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