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プロタミン投与中のサクションポンプ内血栓

2017年12月掲載

薬剤 プロタミン血液・体液用薬
副作用 サクションポンプ内血栓
概要 83歳、女性。重度大動脈弁狭窄症に対して、大動脈弁置換術が施行された。手術は予定通り進行し、体外循環からの離脱にあたり右内頸静脈に留置したシースからプロタミンテストドーズを投与した。その後、脱血管抜去の際に出血したため、サクションポンプで吸引しながら止血した。止血は問題なく行われ、その間プロタミンを同様の経路でヘパリン等量となる1/3まで緩徐に投与した。その後、サクションポンプ、静脈リザーバー、メッシュフィルター、遠心ポンプ、人工肺内に血栓が付着していることが判明した。手術は問題なく経過し、合併症なく退院となった。

監修者コメント

ヘパリンを用いた体外循環終了時にはヘパリン拮抗剤であるプロタミンによる血液凝固能の回復が必要である。本症例は、大動脈弁置換術施行後の体外循環離脱時のプロタミン投与に際し、サクションポンプ内に血栓を生じた稀な一例である。脱血管抜去部から出血したため、サクションポンプで吸引した際、投与されたプロタミンの一部が出血とともに吸引されたためにサクションポンプ内で血栓が生じたと考えられた。体外循環回路内の血栓は重篤な障害などを起こす危険性があり、プロタミンの投与経路や投与速度、投与量、タイミングなどには注意が必要である。

著者(発表者)
荒井香菜ほか
所属施設名
済生会横浜市東部病院麻酔科
表題(演題)
プロタミン投与中にサクションポンプ内で血栓が生じた稀有な1症例 -プロタミン投与法の考察-
雑誌名(学会名)
Cardiovascular Anesthesia 21(S) 355 (2017)
第22回 日本心臓血管麻酔学会学術大会 (2017.9.16-18)

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