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トリフルリジン・チピラシル塩酸塩による急性胆管炎

2017年11月掲載

薬剤 トリフルリジン・チピラシル塩酸塩腫瘍用薬
副作用 急性胆管炎
概要 68歳、男性。直腸がん(stage IV)で、多発性転移性肝腫瘍も進行した状態にあり、胆道系酵素(ALP)が軽度上昇していた。進行再発大腸がんに対し、4次治療としてトリフルリジン・チピラシル塩酸塩配合錠120 mg/日を開始したが、2日目より食欲減退、下痢、耳鳴りが生じ、休薬期間中(21日目)に総ビリルビン(T-Bil)、アスパラギン酸-アミノトランスフェラーゼ(AST)、体温、C反応性蛋白(CRP)が急上昇し投与中止となった。翌日の腹部CTで肝左葉の肝内胆管拡張が確認され、それによる胆管炎が発熱の原因である可能性が高いと診断された。同日より、疼痛コントロール目的で処方されていたロキソプロフェン60 mg錠に加え、ウルソデオキシコール酸100 mg錠とワイスタール®注(1日3回投与)が開始された。28日目にT-Bil、ALP、CRPはいずれも低下し、ワイスタール®の投与は中止、32日目にbest supportive careの方針となり、同日退院した。
胆管炎の加療により速やかに改善し、加療中止後も再発がみられなかったことから、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩による急性胆管炎の可能性が高いと考えられた。

監修者コメント

トリフルリジン・チピラシル塩酸塩(ロンサーフ®)は代謝チミジン拮抗薬に分類される新規経口抗悪性腫瘍薬である。チピラシル塩酸塩が主成分のトリフルリジンの分解に関与するチミジンホスホリラーゼを阻害するため、トリフルリジンの血中濃度を維持し、腫瘍増殖抑制作用を増強している。本症例は進行再発直腸がんに対する4次治療としてトリフルリジン・チピラシル塩酸塩を導入したところ、急性胆管炎を発症した。本剤による急性胆管炎の報告はほとんど認められないが、本症例のように多発転移性肝腫瘍を合併し、胆道系酵素上昇、肝内胆管拡張、血清アルブミン低値などを認める患者に対して投与する場合には、急性胆管炎の発症に注意する必要があると考えられた。

著者(発表者)
角川幸男ほか
所属施設名
大阪府立病院機構大阪府立成人病センター薬局ほか
表題(演題)
トリフルリジン・チピラシル塩酸塩配合錠により急性胆管炎が発症した1症例
雑誌名(学会名)
日本病院薬剤師会雑誌 53(6) 714-717 (2017.6)

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