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ゾレドロン酸水和物による顎骨壊死

2013年8月掲載

薬剤 ゾレドロン酸水和物その他の代謝性医薬品
副作用 顎骨壊死
概要 44歳、女性。1年4ヵ月前に左乳癌T4N2M1と診断され、各種化学療法が施行されたが、効果判定はSDであった。当院受診し、タモキシフェン+capecitabine+ゾレドロン酸水和物を開始した。2年10ヵ月後の定期受診時に見当識障害が認められ、CT検査を行ったところ、脳転移、脳浮腫を認めたため同日入院となった。グリセオール、リンデロンの投与を開始し、頭蓋ドレナージ術を施行した。内視鏡下副鼻腔開放術を施行、下鼻道に粘膜欠損部位があったため、口腔外科を受診したところ、上顎骨骨髄炎、上顎骨壊死を認めた。左上顎骨髄炎頭蓋底まで炎症が及んでおり、壊死部分をその都度掻爬する方針となった。保存的加療にて脳膿瘍のコントロールは良好であったが、第75病日永眠となった。

監修者コメント

ビスフォスフォネート製剤は癌の骨転移などに有効な治療薬として広く使用されている。本症例では左乳癌に対してゾレドロン酸水和物を2年11ヶ月投与した。ビスフォスフォネート製剤投与による顎骨壊死が問題となっているが、本症例のように顎骨壊死に続発して脳膿瘍を発症したのはまれである。海外ではビスフォスフォネート製剤投与前に口腔衛生状態の観察、保存不可能な歯の抜歯、侵襲的な歯科処置を完了させ、歯周組織の状態を良好な状態にしておくことが推奨されている。骨転移が発見され、ビスフォスフォネート製剤を投与する際には、口腔清掃指導など歯周疾患の予防を積極的に実践していく必要がある。医師と歯科医師が協力してビスフォスフォネート製剤による顎骨壊死に対する診断・治療能力を高めていく必要がある。

著者(発表者)
松下亜子ほか
所属施設名
市立堺病院外科
表題(演題)
乳癌骨転移に対するビスフォスフォネート製剤の長期間投与に関連した顎骨壊死に続発した脳膿瘍の1例
雑誌名(学会名)
癌と化学療法 40(5) 631-633 (2013.5) 

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