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フィンゴリモドによる進行性多巣性白質脳症

2017年9月掲載

薬剤 フィンゴリモドその他の代謝性医薬品
副作用 進行性多巣性白質脳症
概要 34歳、女性。多発性硬化症(MS)に対し4年前からフィンゴリモドを開始した。再発なく経過していたが、右手の筋力低下を自覚し受診、中等度構音障害、右痙性片麻痺、右痙性歩行も認めたため入院となった。
脳MRIでは、以前よりあった両側側脳室周囲の卵円形病変の他に、左前頭頭頂葉白質に皮質と明瞭な境界を持つFLAIR高信号、拡散強調像高信号病変を認めた。髄液中のJCウィルス(JCV)-DNA qPCRは、国立感染症研究所15.5 copies/mL、NIH 28 copies/mLといずれも陽性であった。In situ hybridizationでは陽性細胞を5個認め、パラフィンブロックを用いたJCV-DNA qPCRでは661,500 copies/μLのJCV-DNAが検出されたことから、進行性多巣性白質脳症と診断された。

監修者コメント

免疫抑制剤であるフィンゴリモドは、MSに対する再発予防薬として使用されている。副作用として、稀に進行性多巣性白質脳症(PML)を発症することが報告されている。PMLは、JCウイルスによって起こる脱髄疾患であり、免疫が抑制された状態になると発症すると考えられている。本薬剤の添付文書における重大な副作用にもPMLが記載されている。本薬剤の投与中は患者の状態を十分に観察し、意識障害、認知障害、麻痺症状、言語障害などの症状が認められた場合は、投与を中止し、MRIによる画像診断および脳脊髄液検査などの適切な処置を行う必要がある。

著者(発表者)
西山修平ほか
所属施設名
東北大学医学部神経内科ほか
表題(演題)
初期の病理像を呈したFingolimod関連進行性多巣性白質脳症の1例
雑誌名(学会名)
Neuropathology 37(S) 96 (2017.6)
第58回 日本神経病理学会総会学術研究会 (2017.6.1-3)

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