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ソラフェニブによる創傷治癒遅延、人工関節周囲感染

2017年7月掲載

薬剤 ソラフェニブ腫瘍用薬
副作用 創傷治癒遅延、人工関節周囲感染
概要 73歳、男性。自宅で転倒、大腿骨頸部骨折を受傷し手術加療を受けることとなった。入院時の服薬内容はソラフェニブのほか、向精神薬、制酸薬、制吐薬、胃粘膜保護薬であり、すべて継続した。受傷後4日目に大腿骨頭置換術を施行、順調に経過していたが、術後8週の転倒時に左大腿部を打撲、創離開が生じ、逆行性に人工関節周囲感染に至った。骨頭のみを抜去し抗生剤含有セメントに置換してデブリドマンを施行したが、創の癒合が得られなかった。継続していた血管内皮細胞増殖因子(VEGF)阻害薬であるソラフェニブの内服を中止することにより、感染制御と創治癒が得られた。

監修者コメント

ソラフェニブ(ネクサバール®)は、腫瘍細胞の増殖に働くMAPキナーゼ経路や血管新生に働くVEGF受容体およびPDGF受容体の活性を阻害する分子標的薬であり、肝細胞がんや腎細胞がんの治療薬として使用されている。VEGF阻害薬の中でも、ベバシズマブのような生物学的製剤では創傷治癒遷延が報告されているが、本文献では、ソラフェニブのような低分子チロシンキナーゼ阻害薬であっても創傷治癒遷延をおこしうることを報告している。VEGF阻害薬の休薬期間は原疾患進行の危険性から最小限にとどめるべきであるが、創傷治癒遷延のリスクがあるため、受傷直後は創治癒が確認されるまで中止することが望ましいと考えられる。

著者(発表者)
田島紘己ほか
所属施設名
帝京大学医学部附属病院外傷センター
表題(演題)
血管内皮細胞増殖因子阻害薬による創傷治癒遅延から大腿骨頭置換術後感染を来たした1例
雑誌名(学会名)
日本骨・関節感染症学会雑誌 30 60-63 (2016)

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