タクロリムスによる脳症
2017年6月掲載
薬剤 | タクロリムスその他の代謝性医薬品 |
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副作用 | 脳症 |
概要 | 48歳、女性。当院転院日より、潰瘍性大腸炎に対しタクロリムスを開始したところ、投与開始1週間程度で臨床的寛解状態となった。しかし、投与開始6日目に薬の内服間違いがあり、その後も認知機能の低下を疑うエピソードが続き、11日目には傾眠傾向が出現した。抗うつ薬などのタクロリムス以外の薬剤を中止するも改善を認めず、投与24日目にタクロリムスを中止すると症状は速やかに改善した。潰瘍性大腸炎に関してはインフリキシマブの投与に変更し、その後も臨床的寛解が維持され、43日目に退院となった。 |
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免疫抑制薬であるタクロリムス(プログラフ®)は、臓器移植における拒絶反応の抑制に加え、中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎などの治療薬としても広く用いられている。本症例では、潰瘍性大腸炎に対してタクロリムスを投与したところ、意識障害、認知機能の低下をきたし脳症を発症した。臓器移植患者では、タクロリムスなどのカルシニューリン阻害薬による可逆性白質脳症症候群や高血圧脳症、脳血管障害などが報告されているが、潰瘍性大腸炎患者でのタクロリムスによる脳症は稀であり、貴重な報告といえる。
- 著者(発表者)
- 鶴田将史ほか
- 所属施設名
- 京都大学医学部附属病院
- 表題(演題)
- 潰瘍性大腸炎に合併したタクロリムス脳症の1例
- 雑誌名(学会名)
- 日本消化器病学会近畿支部 第106回 例会 プログラム・抄録 76 (2017)
第106回 日本消化器病学会近畿支部例会 (2017.2.25)
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