タゾバクタム・ピペラシリンによるショック、間質性腎炎
2017年5月掲載
薬剤 | タゾバクタム・ピペラシリン抗生物質製剤 |
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副作用 | I型アレルギー性ショック、IV型アレルギー性急性間質性腎炎 |
概要 | 50歳代、男性。慢性閉塞性肺疾患(COPD)が増悪し入院となり、デキサメタゾン、タゾバクタム・ピペラシリン(TAZ/PIPC)、ボノプラザンで加療開始となった。第2病日に血液分布異常性ショックに陥り、急激に腎性腎不全が進行し、当初疑われた敗血症性ショックによる急性腎前性腎不全のみでは説明しがたい所見も認められた。薬剤性の急性尿細管障害の合併を考慮してボノプラザンの投与を中止しTAZ/PIPCをPIPCに変更したところ、血清Cre値が改善し、独歩退院となった。退院後にDLSTを再検したところ、TAZ/PIPC でStimulation Index2118%と強陽性の反応が得られたことから、後方視的に薬剤性の急性尿細管間質性腎炎と診断した。薬剤に起因したI型アレルギー性のショックとIV型アレルギー性の急性間質性尿細管障害が原因と考えられた。 |
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近年、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪例に対する抗菌薬とステロイドの有効性が示されている。本症例ではCOPDの急性増悪に対してタゾバクタム・ピペラシリン(TAZ/PIPC)を投与したところ、ショックと急性間質性尿細管障害を発症した。血圧低下の主な原因としてアナフィラキシー反応に類似した急性のI型アレルギー反応が関与していた可能性が考えられた。またDLSTでTAZ/PIPCが強陽性だった点は、同薬剤によるIV型アレルギーの関与を強く示唆する結果であった。抗菌薬によるI型とIV型アレルギーの重複例は極めて稀である。今後もCOPDの急性増悪例に対して抗菌薬を投与する機会は増加することが予想され、抗菌薬によるアレルギーや薬剤性腎障害に注意する必要がある。
- 著者(発表者)
- 塩見叡ほか
- 所属施設名
- 岩手県立久慈病院循環器科
- 表題(演題)
- ショックを呈したタゾバクタム・ピペラシリンによる薬剤性間質性腎炎の一例
- 雑誌名(学会名)
- 岩手県立病院医学会雑誌 56(2) 124-127 (2016.12)
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