エスシタロプラムによるアパシー症候群
2017年5月掲載
薬剤 | エスシタロプラム中枢神経用薬 |
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副作用 | アパシー症候群 |
概要 | 20歳代後半、男性。デスクワークから現場の仕事に移った頃から人間関係に悩むようになり、当科を受診した。大うつ病と診断され、エスシタロプラム10 mg/日とフルニトラゼパム2 mg/日を開始、2週間後に効果不十分で消化器症状などの副作用も認められなかったことから、エスシタロプラムの投与量を20 mg/日に増量した。順調な回復過程にあったものの、8ヵ月目頃から「意欲がない」「家でゴロゴロしている」など意欲低下と活動性低下を訴えるようになった。エスシタロプラム誘発性のアパシー症候群を疑い、同薬を10 mg/日に減量、デュロキセチン20 mg/日を追加し症状は速やかに改善、通常勤務に戻る相談を上司と話し合うことができるまでに回復した。 |
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アパシーとは、感情、興味、関心などが欠如あるいは消失した状態である。抑うつ状態との鑑別が難しいことがあるが、抑うつ状態では苦悩、苦痛を伴うのに対し、アパシーでは苦痛、苦悩感が欠如しているのが特徴である。セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)はうつ病の治療薬として広く使用されている。本症例では、大うつ病に対してエスシタロプラム(レクサプロ®)を投与したところ、一旦寛解したものの、その後誘因なく急速に意欲低下を主とするアパシーが出現した。SSRI誘発性アパシー症候群(SAS)はまだ十分に認識されていないが、SSRIによる治療を行う際には、アパシー症候群を合併する可能性があることを念頭におく必要がある。
- 著者(発表者)
- 本間正教ほか
- 所属施設名
- 須田病院
- 表題(演題)
- EscitalopramによるSSRI誘発性アパシー症候群が疑われた1症例
- 雑誌名(学会名)
- 精神医学 59(1) 79-83 (2017.1)
監修者コメント