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ポリスチレンスルホン酸ナトリウムによる低カリウム性ミオパチー

2013年6月掲載

薬剤 ポリスチレンスルホン酸ナトリウム循環器官用剤
副作用 低カリウム性ミオパチー
概要 66歳、男性。保存期慢性腎不全の治療のためポリスチレンスルホン酸ナトリウム(SPS)、球形吸着炭を常用していた。腹痛が出現し、下腹部痛を主訴に前医を受診。高度便秘による腹痛の診断で入院したが、改善がみられず、CK値の上昇を認めたため当科に搬送された。四肢の脱力を認め、自力歩行困難であった。来院時の所見では下腹部の圧痛、腹膜刺激症状、四肢の筋力低下を認めた。検査所見ではK1.6mEq/Lと著明に低下し、CK、AST、LDHの上昇を認めた。大腸内視鏡検査では腸管粘膜の異常は認められず、CK上昇及び四肢の脱力は低カリウム性ミオパチーによるものと診断し、厳重な心電図モニターのもとにK補給、下剤の大量投与、浣腸、摘便を行った。第2病日の大量の排便後、腹痛は消失し、血清K値も徐々に回復し、歩行可能となった。

監修者コメント

ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(SPS)は高K血症の治療薬として特に慢性腎不全の保存期の治療では、球形吸着炭と併用されることも多い。いずれも副作用として便秘が報告されている。本症例でも両者を常用しており、便秘から腹痛および脱力で発症し、低K性ミオパチーと診断された。便秘によりSPSが停滞し、低K血症の原因になったと考えられる。低K血症はSPSの代表的な副作用の一つであるが、ミオパチーとしての報告は稀である。SPSおよび球形吸着炭を常用している患者では、定期的に血清K値を測定し、必要に応じてKを補給し、排便をコントロールすることが重要である。

著者(発表者)
藤野靖久ほか
所属施設名
岩手医科大学救急医学講座ほか
表題(演題)
ポリスチレンスルホン酸ナトリウムおよび球形吸着炭常用による高度便秘から低カリウム性ミオパチーをきたした1例
雑誌名(学会名)
中毒研究 26(1) 49-53 (2013.3)

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