せりみっく 今月の症例

ホーム > 新着文献  > プロポフォールによるプロポフォール注入症候群、横紋筋融解

プロポフォールによるプロポフォール注入症候群、横紋筋融解

2017年4月掲載

薬剤 プロポフォール中枢神経用薬
副作用 プロポフォール注入症候群、横紋筋融解
概要 44歳、男性。スタンフォードA型大動脈解離に対し弓部置換術を行い、プロポフォール約2,500 mgの投与を行った。術後、プロポフォールによる鎮静を行っていたところ、Surgical ICU(SICU)帰室直後よりCKの著名な上昇を認め、術後(POD)6日には15,247 IU/Lに達し、40℃以上の発熱も持続した。POD 4に心房細動(AF)を発症し、血行動態が破綻、さらに、急性腎障害も併発、pH 7.175、乳酸値11 mmol/Lの乳酸アシドーシス、無尿となり血液透析濾過を開始した。CK高値から横紋筋融解の可能性を考慮し、POD 6より被疑薬のプロポフォールを中止、代替としてミダゾラムによる鎮静に切り替えた。プロポフォールの投与中止によりCK低下、腎障害と乳酸アシドーシスの改善が認められた。プロポフォール注入症候群による横紋筋融解であった可能性が示唆された。POD 26に血液浄化を離脱、POD 48に気管切開を施行、POD 52にSICUを退室した。退室時に脳梗塞によると思われる意識障害、四肢麻痺があり、POD 90にリハビリテーション目的に他院へ転院した。

監修者コメント

プロポフォールは、全身麻酔の導入および維持などに使用されているが、本剤の使用中に横紋筋融解、急性腎障害、乳酸アシドーシス、脂質異常症などをきたすことがあり、プロポフォール注入症候群(propofol infusion syndrome、PRIS)として報告されている。本症例では、術後にプロポフォールを用いて鎮静を行っていたところ、CK高値、急性腎障害、乳酸アシドーシスなどを認めたためPRISが疑われた。プロポフォールの長期投与中はCK、pH、乳酸値などを定期的にモニタリングし、PRISが疑われた場合は早期に他の鎮静剤へ変更するなどの迅速な処置を行うことが重要である。

著者(発表者)
平井昂宏ほか
所属施設名
名古屋大学大学院医学系研究科麻酔・蘇生医学分野ほか
表題(演題)
大血管手術後にプロポフォール注入症候群による横紋筋融解を発症したと考えられる一症例
雑誌名(学会名)
日本集中治療医学会雑誌 23(6) 647-650 (2016.11)
第22回 日本集中治療医学会東海北陸地方会 (2014)

新着文献 一覧

PAGETOP