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トラスツズマブによる重症血小板減少症

2017年4月掲載

薬剤 トラスツズマブ腫瘍用薬
副作用 血小板減少症
概要 80歳代、女性。左乳癌に対し左乳房部分切除術と腋窩リンパ節郭清を行った。術後療法としてレトロゾールを開始し、13日後にトラスツズマブの初回投与を行った。トラスツズマブ投与翌日に左口腔内膨隆が出現し、その翌日に同膨隆が破裂、出血した。止血困難のため同日当科を受診、口腔内出血のほかに下肢を中心に全身に出血斑を認めた。血液検査で血小板数0.1万/μLと著明な血小板減少を認めたが、その他の末梢血検査、生化学検査、止血検査に異常は認めなかった。トラスツズマブによる薬剤性重症血小板減少症を疑い、血小板輸血、ステロイド経口投与およびステロイドパルス療法を行ったところ、血小板数は18.0万/μLまで回復した。再投与は行っておらず、血小板減少症の再発を認めていない。

監修者コメント

トラスツズマブ(ハーセプチン®)は、抗HER2ヒト化モノクローナル抗体であり、HER2過剰発現が確認された乳がんや胃がんの治療薬として使用されている。本症例では、免疫組織学検査にてHER2強陽性が確認された乳がんの術後療法としてトラスツズマブを投与したところ、初回投与の翌日に著明な血小板減少を認めた。トラスツズマブによる薬剤性血小板減少症は稀ではあるが、対応が遅れれば重篤な合併症に至ることもあるため、特に本剤の投与直後は慎重に経過観察を行う必要がある。

著者(発表者)
三宅佳乃子ほか
所属施設名
済生会中和病院乳腺外科ほか
表題(演題)
トラスツズマブ初回投与後に著明な血小板減少を認めた一例
雑誌名(学会名)
第14回 日本乳癌学会近畿地方会 プログラム・抄録集
第14回 日本乳癌学会近畿地方会 (2016.12.3)

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