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ソラフェニブによる急性うっ血性心不全

2017年4月掲載

薬剤 ソラフェニブ腫瘍用薬
副作用 急性うっ血性心不全
概要 60歳代後半、男性。2回の脳梗塞に対し抗凝固剤を、また眩暈の症状で投薬・外来点滴を適時受けていた。肝細胞癌の腹腔内破裂と診断され、肝切除術を施行。切除後は外来でエンテカビル投与を開始し、2年間は再発もなく順調に経過していた。術後25ヵ月で腹腔内転移が判明。ソラフェニブの服用開始後1年4ヵ月ごろより、いつもと異なる体動時の眩暈を訴え、救急外来を受診した。心電図で完全左脚ブロック、心拡大、生化学検査でBNP上昇を認め、心筋伝導障害による急性うっ血性心不全と診断、入院となった。入院後はソラフェニブの中止、利尿剤投与を行い、症状は4病日で改善、2週間で退院した。ソラフェニブの中止、コエンザイムQ10投与で経過観察を行い、4ヵ月現在、脚ブロックの出現、腹腔内転移の増大もなく経過観察している。

監修者コメント

ソラフェニブ(ネクサバール®)は、チロシンキナーゼを標的とした分子標的治療薬の1つであり、複数のタンパクに作用するマルチキナーゼ阻害薬に分類される。切除不能な肝細胞がんや腎細胞がんの治療薬として使用されているが、手足症候群をはじめとして、様々な副作用が報告されている。本症例では、肝細胞がんに対してソラフェニブを1年4ヶ月間投与していたところ、完全左脚ブロックによる急性うっ血性心不全を発症した。本剤による急性心筋梗塞や心筋虚血などの副作用は報告されているが、心筋伝導障害による急性心不全の副作用は稀であり、貴重な報告である。

著者(発表者)
田中正俊
所属施設名
医療法人弘恵会ヨコクラ病院臨床研究センター肝臓内科
表題(演題)
ソラフェニブの長期投与により心筋伝導障害による急性心不全を生じた1症例
雑誌名(学会名)
第15回 日本肝がん分子標的治療研究会 プログラム・抄録集 84 (2017)
第15回 日本肝がん分子標的治療研究会 (2017.1.14)

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