ダクラタスビル、アスナプレビルによる横紋筋融解症
2017年3月掲載
薬剤 | ダクラタスビル化学療法剤 アスナプレビル化学療法剤 |
---|---|
副作用 | 横紋筋融解症 |
概要 | 64歳、女性。慢性C型肝炎に対しダクラタスビル(ダクルインザ®)・アスナプレビル(スンベプラ®)併用療法を開始、糖尿病や脂質異常症などの併存疾患があり、多種の薬剤も併用していた。17日目から発熱、21日目から手足の脱力を訴え入院となった。血液検査では、血小板値12.5x104/μLと軽度低下、シスタチンC 0.92mg/L、クレアチニン(Cr) 0.95mg/dL、尿素窒素(BUN) 13.9mg/dL、eGFR 46.0mL/minと軽度腎障害を認め、クレアチンキナーゼ(CK)が435 U/Lと増加していたことから横紋筋融解症と慢性腎臓病の急性増悪と診断された。薬剤性腎障害が先行した可能性も完全に否定し得ないものの、横紋筋融解症の改善とともに腎障害が軽快した経緯より、腎障害の悪化は横紋筋融解症が誘因と考えられた。 入院後、両剤を中止、横紋筋融解症に対し輸液による保存的治療が開始され、血液検査所見ならびに自覚症状は経時的に改善、退院となった。また、両剤中止にもかかわらず、HCV RNAは治療終了後24週間陰性を持続し、最終的にSustained Virological Response(SVR)24に至った。 |
---|
C型慢性肝疾患の治療は、従来用いられてきたインターフェロン製剤を使用しない、直接作用型抗ウイルス薬(Direct Acting Antivirals: DAAs)であるダクラタスビルおよびアスナプレビルの併用療法により飛躍的に進歩した。一方で、臨床現場での実用化後は、臨床試験では経験のなかった副作用が報告され始めている。本症例で報告されている横紋筋融解症も国内臨床試験および市販後調査では報告のない副作用であり、今後も慎重な経過観察を行う必要がある。
- 著者(発表者)
- 平石哲也ほか
- 所属施設名
- 川崎市立多摩病院消化器・肝臓内科
- 表題(演題)
- C型慢性肝炎に対するダクラタスビル・アスナプレビル併用療法による横紋筋融解症の1例
- 雑誌名(学会名)
- 肝臓 57(11) 598-605 (2016.11)
監修者コメント