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酸化マグネシウムによる大腸多発腸石

2013年5月掲載

薬剤 酸化マグネシウム消化器官用薬
副作用 大腸多発腸石
概要 70歳代、女性。腰痛を主訴に整形外科を受診し、第一腰椎圧迫骨折と診断され、尿路感染症が認められたため、内科入院した。3ヵ月後に脳梗塞を発症し寝たきりとなった。便秘傾向にあり、酸化マグネシウム製剤の投与を開始した。経過中、食事摂取量が低下しているため、補液を適宜行い、繰り返す尿路感染症の他、偽膜性腸炎などの感染症のため各種抗生剤を投与した。酸化マグネシウム開始8ヵ月後に腹部膨満が増悪し、腹部CTで直腸からS状結腸に多量の便の貯留を認めた。その後、排便コントロールは困難となり、酸化マグネシウムの増量、グリセリン浣腸等を行った。35ヵ月後、腹部膨満の原因精査目的で腹部CTを施行したところ、上行結腸および下行結腸に約1cm大の大腸内に多発する腸石を認めた。結石分析に提出したところ炭酸マグネシウム結石と推測された。酸化マグネシウムの内服を中止し、排便コントロールを行い、2週間後には腸石は消失した。

監修者コメント

真性腸石とは正常腸内容物が貯留、沈殿した結果、腸内で形成される結石のことである。真性腸石の本邦報告例は少数であるが、本文献では酸化マグネシウム製剤の長期内服により大腸内多発腸石を来した稀な1例を報告している。真性腸石の本邦報告例は狭窄、憩室などの器質的因子が明らかな場合が多いが、本症例では明らかな器質的因子はなく、寝たきりの状態による腸管運動機能の低下や腸管拡張が停滞因子となり腸石形成に関与したと考えられる。真性腸石による合併症として腸閉塞や穿孔があり、特に寝たきりの高齢者に酸化マグネシウム製剤を長期間投与する際には腸石の合併も念頭に置く必要がある。

著者(発表者)
川野道隆ほか
所属施設名
総合病院社会保険徳山中央病院消化器内科
表題(演題)
酸化マグネシウム製剤服用による大腸多発腸石の一例
雑誌名(学会名)
山口医学 62(1) 55-59 (2013.2)

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