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セフェピムによる脳症

2017年1月掲載

薬剤 セフェピム抗生物質製剤
副作用 脳症
概要 64歳、男性。発熱・食欲不振・後頸部痛で当院を受診し、髄液検査より細菌性髄膜炎と診断した。各種抗菌薬を投与後、第9病日からCefepime(CFPM)とGentamicin(GM)を投与したところ、投与3日後に傾眠傾向を認め、ミオクローヌス・羽ばたき振戦が出現し、脳波では全般性周期放電および三相波が認められた。非痙攣性てんかん重積を疑いDiazepam投与を行ったが、症状の改善は認められなかった。脳波所見からは何らかの代謝性脳症や薬剤性脳症が疑われ、CFPMとGMを中止し、Doripenemに変更した。その後意識障害の改善を認め、CFPMもしくはGMによる薬剤性脳症が疑われたが、意識障害、ミオクローヌス、脳波にて広汎なδ波、全般性周期放電および三相波などの所見よりCefepime脳症と診断した。血中Cefepime濃度はやや低値であったものの、髄膜炎による血液脳関門の破壊を加味すると十分に中枢神経系副作用をきたしうる濃度に達していたと考えられた。

監修者コメント

本文献では、細菌性髄膜炎に対するセフェピム(マキシピーム®)による加療中に意識障害をきたし、セフェピム脳症と診断された症例を報告している。セファロスポリン系抗生剤の中でもセフェピムによる中枢神経障害は比較的頻度が高く、セフェピム脳症と呼ばれている。特に腎機能障害・肝機能障害患者および脳梗塞・髄膜炎のような血液脳関門が破壊される病態で発症しやすいことが報告されている。セフェピム投与中に意識障害などを認めた場合には、セフェピム脳症を念頭に置く必要がある。

著者(発表者)
戸田諭補ほか
所属施設名
日本医科大学千葉北総病院神経内科
表題(演題)
細菌性髄膜炎治療中に意識障害が出現し,非痙攣性てんかん重積との鑑別が問題となったCefepime脳症の1例
雑誌名(学会名)
臨床神経学 56(10) 678-683

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