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タクロリムスによる酒さ様皮膚炎

2013年5月掲載

薬剤 タクロリムスその他の代謝性医薬品
副作用 酒さ様皮膚炎
概要 62歳、女性。顔面の皮疹に対してステロイド軟膏が、長期処方されていた。難治のため当科を受診、前額部、頬部にびまん性の紅斑が認められ、ステロイド軟膏外用による酒さ様皮膚炎と診断された。5年後に顔面に紅斑、丘疹が出現し、近医皮膚科よりプロピオン酸アルクロメタゾン軟膏が処方されていたが難治であった。その後、ステロイド軟膏を中止され、タクロリムス軟膏およびケトコナゾールクリームを処方された。増悪と改善を繰り返すようになり当科を受診した。前額部、頬部、下顎部に浸潤を伴うびまん性潮紅がみられ、紅色丘疹も伴っていた。両眼瞼には著明な浮腫がみられた。直接鏡検では真菌、毛包虫は検出されず、貼付試験ではタクロリムス及びケトコナゾールは陰性だった。タクロリムス軟膏を中止して3ヵ月後に皮疹が悪化し、毛包虫が確認された。臨床経過、臨床像および病理学的所見より、タクロリムス軟膏による酒さ様皮膚炎と診断した。

監修者コメント

酒さ様皮膚炎はステロイド外用薬を顔面に使用することにより生じる医原性の皮膚炎と定義されている。しかし、近年、国内外でタクロリムスやピメクロリムス軟膏外用による酒さ様皮膚炎が報告されており、ステロイド外用による医原病という定義に疑問がもたれている。本症例のようにタクロリムスでも酒さ様皮膚炎が生じることがあり、患者側の要因の一つとして自然免疫があげられている。近年、酒さ様皮膚炎においてToll-like receptor 2の関与などが示唆されている。自然免疫を含めた酒さ様皮膚炎の病態の解明と疾患自体の定義のさらなる検討が望まれる。

著者(発表者)
池永五月ほか
所属施設名
弘前大学医学部皮膚科学教室
表題(演題)
タクロリムスによる酒さ様皮膚炎
雑誌名(学会名)
皮膚病診療 35(2) 169-172 (2013.2)

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