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G-CSFによるARDS

2016年12月掲載

薬剤 G-CSFその他
副作用 ARDS(急性呼吸促迫症候群)
概要 66歳、女性。乳癌骨転移に対してドキソルビシン+シクロフォスファミド(AC)療法とデノスマブ投与を開始した。Day12に発熱性好中球減少症を認めたため、G-CSFを投与した。好中球が改善傾向にあったDay15に突然呼吸困難を訴え、PiO2/FiO2比が78.2と低下し、両側肺のびまん性浸潤影を認めたことから、急性呼吸促迫症候群(ARDS)と診断した。人工呼吸管理、ステロイド、シベレスタット投与による全身管理を施行し、呼吸状態は改善した。

監修者コメント

ARDSは敗血症などの侵襲が誘因となり、高サイトカイン血症から好中球の活性化を経て、肺血管内皮や肺胞上皮の透過性亢進により生じる急性呼吸不全である。本症例では、化学療法に伴う発熱性好中球減少症に対してG-CSFを投与したところ、ARDSを発症した。また本症例では、呼吸器症状が出現した時期に薬剤性の間質性肺炎を発症していた可能性があり、先行する肺障害の状況に加えてG-CSFを使用したことが誘因となり、ARDSを発症したと考えられた。化学療法により好中球が減少した時期に感染性・薬剤性肺炎を発症した患者に対してG-CSFを投与する際には、慎重な経過観察が必要である。

著者(発表者)
鳩野みなみほか
所属施設名
香川県立中央病院乳腺・内分泌外科
表題(演題)
乳癌化学療法中にG-CSFが原因と考えられるARDSを発症した1例
雑誌名(学会名)
乳癌の臨床 31(4) 331-338 (2016.8)

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