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シスプラチンによるSIADH(低ナトリウム血症)

2013年5月掲載

薬剤 シスプラチン腫瘍用薬
副作用 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群、低ナトリウム血症
概要 91歳、女性。頬粘膜癌と頸部リンパ節転移に対して、化学放射線療法を開始。抗癌剤はシスプラチン5mg/回を投与した。第52病日の夜間、患者がトイレへ移動中に転倒し、左大腿骨転子部骨折と診断された。その直後よりせん妄が出現し、さらに傾眠傾向となった。血清Na濃度が112mEq/Lであったことから、シスプラチンによる抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)に伴う低Na血症と推測し、低Na血症の治療を開始した。血清Na濃度の上昇とともに意識は清明となり、退院まで化学療法は行われず、低Na血症を認めなかった。

監修者コメント

悪性腫瘍に対する化学療法により稀に意識障害を発症することがあり、その原因の1つとして抗癌剤による抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)に伴う低Na血症がある。本症例はシスプラチン投与後に著明な低Na血症(112mEq/l)と意識障害を認めており、シスプラチンによるSIADHが疑われる。添付文書によれば、シスプラチンによるSIADHの頻度は0.1%未満とされているが、悪性腫瘍に対する化学療法実施時は、頻回に電解質を検査し、意識障害や低Na血症を認めた場合には速やかに治療を行うことが重要である。

著者(発表者)
大内貴志ほか
所属施設名
東京歯科大学市川総合病院麻酔科
表題(演題)
抗癌剤による抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)が原因と考えられた低ナトリウム血症を来した1症例
雑誌名(学会名)
第25回 日本老年麻酔学会 44 (2013)
第25回 日本老年麻酔学会 (2013.2.9-10)

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