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イマチニブによる末梢血管障害

2016年11月掲載

薬剤 イマチニブ腫瘍用薬
副作用 末梢血管障害
概要 49歳、男性。2型糖尿病による糖尿病性腎症により血液透析が導入され、その後、CMLと診断され、イマチニブの内服が開始された。3年間の長期内服後、急速に進行する両側手指の壊死潰瘍が多発し入院となった。内科治療に反応せず最終的に手指の切断に至った。病理組織では中膜の石灰化は軽度で、血管内膜の線維性肥厚が強く内腔が狭小化しており、内膜の浮腫性肥厚を特徴とするカルシフィラキシスとは一致しなかった。血管障害の成因として、イマチニブの休薬、再開と潰瘍の病勢が一致していることから、イマチニブによる血管障害が病態の中心にあると診断した。

監修者コメント

慢性骨髄性白血病CMLは染色体9番と22番の転座により形成されるフィラデルフィア染色体から生じるBcr-Abl蛋白が原因となっている。イマチニブ(グリベック®)は、Bcr-Abl蛋白によるチロシンキナーゼ活性を阻害することで、白血病細胞の増殖を抑制する。本症例では、CMLを合併した糖尿病性腎症による透析患者に対してイマチニブを長期間内服後、急速に進行する両側手指の壊死性潰瘍を発症した。イマチニブによる血管障害のリスクは比較的少ないとされているが、本症例のように透析や糖尿病による潜在的血管障害や腎不全による薬物代謝能低下などを認める症例では特に注意が必要である。

著者(発表者)
山谷琴子ほか
所属施設名
東京労災病院腎臓代謝内科ほか
表題(演題)
イマチニブを長期内服していた維持透析患者に生じた多発末梢血管障害の1例
雑誌名(学会名)
日本透析医学会雑誌 49(8) 553-558 (2016.8)

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