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リツキシマブによる血清病

2016年10月掲載

薬剤 リツキシマブ腫瘍用薬
副作用 血清病
概要 65歳、女性。MALT(Mucosa Associated Lymphoid Tissue)リンパ腫の再燃のため、リツキシマブ単剤投与による治療を開始した。2回目投与後4日目に前胸部に膨疹が出現し、四肢へ拡大して発熱と関節痛が出現した。治療により症状は軽快したため、3回目のリツキシマブを投与したところ、投与開始30分後に顔面と口唇の急激な腫脹、喉頭違和感、呼吸困難等が出現し、血中酸素飽和度と血圧の低下を認めた。ただちにリツキシマブを中止し、エピネフリン、ハイドロコルチゾン、抗ヒスタミン剤を投与して症状は軽快した。その後、患者の希望によりリツキシマブを再投与したところ、再開後の2回目投与2日後に発熱、関節腫脹、白血球増加、CRP上昇、血清補体価の低下を認めたため、リツキシマブ誘発性血清病(RISS)を疑い、以後のリツキシマブ投与を中止した。

監修者コメント

抗CD20モノクローナル抗体製剤であるリツキシマブ(リツキサン®)は、CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫などの治療薬として使用されている。リツキシマブなどのマウス由来成分を含んだ抗体医薬品では、抗キメラ抗体の産生によってⅢ型アレルギー反応(免疫複合体反応)が起きる可能性が指摘されている。リンパ腫の治療においてRISSの発症は稀であり、発熱や関節痛、皮疹などの非特異的な症状であるため、見逃してしまうこともあると考えられる。しかし、本症例のようにRISS発症後のリツキシマブ再投与により、アナフィラキシー症状が出現することもあるため、本薬剤の投与後にRISSを疑わせる症状を認めた際には、適切な処置を行う必要がある。

著者(発表者)
磯田淳ほか
所属施設名
独立行政法人国立病院機構西群馬病院血液内科ほか
表題(演題)
繰り返し投与後にアナフィラキシー症状を認めたリツキシマブ誘発性血清病
雑誌名(学会名)
臨床血液 57(6) 771-773 (2016.6)

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